新庄徳洲会病院

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掲載日付:2013.12.15

Vol.99 かぜに抗生物質は効きますか?

 かぜをひいたら早めに薬をのむが大事と思っている人が多いのですが、いわゆるかぜ薬は、症状を和らげるもので、早く治す効果はありません。かぜもインフルエンザも感染性腸炎も、原則として自然に治るので、薬は使わないという選択もあります。症状を抑えて、無理しても仕事を続けなければならない状況はあるでしょうが、休養に勝るのもはありません。

 先進国ではかぜに抗生物質を使うことがありますが、我が国はかなり高頻度に、しかも高価な新しい薬が用いられます。かぜの原因はほとんどがウイルスです。抗生物質は細菌の増殖を抑えますが、ウイルスには効きません。抗生物質を使うのは、かぜに引き続く細菌感染を予防するためで、1万人に1人くらいは肺炎を予防するという報告があります。気管支炎や肺炎は、かぜと区別がつかないこともあり、特に高齢者では危険なことがあるので、念のため処方される事が多いのでしょう。医療機関にかかる最大の意味は、症状がよくならない時にかぜ以外の深刻な病気でないかを調べることなのです。

 日常的に用いられている抗生物質のコストは、一連の治療で千~二千円くらいです。自己負担分はこの3割程度ですが、医療費全体を考えると、年間では億単位になるでしょう。それ以外にも問題があります。一つは副作用、もう一つは耐性菌の増加です。

 副作用の多くは下痢や腹痛などの軽微なものですが、アレルギーやけいれんのように重症化すると命にかかわるものもあります。また、致死的な不整脈が1万人に1人の確率で起こる薬もあります。

 耐性菌とは抗生物質が効きにくい細菌のことで、抗生物質を使うほど日常的に見られるようになります。念のために抗生物質使っていると、本当に必要なときに治らない病気が増えるのです。さらに、小さな子供に使うと喘息などのアレルギー疾患が増えるという報告もあります。これは腸内細菌が変化することが関係しているのではないかと考えられています。

 抗生物質の副作用である下痢を抑えるために併用する乳酸菌製剤には、かぜの予防効果があります。乳酸菌製剤は値段も安く、1日当たり30~40円くらいです。かぜをひいてかぜ薬や抗生物質を使うより、早めの乳酸菌製剤の方がよいかもしれません。でも安い薬なので、制作費が割に合わないから、「よかったね、早めの乳酸菌製剤!」というコマーシャルは作られないでしょう。

院長 笹壁弘嗣
新庄朝日 第731号 平成25年12月15日(日) 掲載


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