新庄徳洲会病院

menu

<

掲載日付:2024.01.25

Vol.274 天然痘は根絶できた、コロナは?

 天然痘は、ワクチンにより根絶できた唯一の感染症です。1万年前にはあったと言われ、我が国には奈良時代に流入しましたが、国内では1956年、世界的には1977年が最後で、世界保健機

関(WHO)は1980年に根絶を宣言しました。天然痘のワクチンである種痘は、1796年に英国の開業医エドワード・ジェンナーが始めました。当時流行していた牛痘に感染した乳搾りの女性が天然痘にならないことから、その患者の発疹内容液を少年の腕に接種したことが始まりです。我が国では、1789年、緒方春朔が人痘法(天然痘のかさぶたを粉末にして鼻に吹き入れる方法)で接種して成功させました。 その後、1849年には長崎に日本初の種痘所も開設されました。

 天然痘ウイルスは飛沫によって感染し、感染率(感染しやすさ)・罹患率(発病しやすさ)・死亡率が非常に高いことが知られています。天然痘ウイルスに暴露すると、ほぼ100%感染し、感染すると100%症状が出るので、無症状の感染者がいません。そのため隔離すべき患者を選別することが容易で、病気を囲い込むことが可能です。罹患した人の20〜50%は死亡しますが、生き残った人は100%免疫を獲得し二度と感染することはありません。また、ヒト以外の動物には感染しないので、他の動物でウイルスが存続して、後にヒトに感染が広がることはありません。さらに、このウイルスは変異しにくいので、ワクチンの効果が持続します。このような条件がそろっているウイルスだから天然痘は根絶できたのです。

 種痘は副反応が強く、10〜50万人に1人の割合で脳炎が発症し、その致死率は40%という高さで、予防接種健康被害救済制度で死亡一時金が支払われた件数は、コロナ以前では42件と最多です。重症の後遺症も10万人に1人の頻度で見られました。副反応が強いのに種痘が許容されたのは、病気の被害が甚大であることと、ワクチンの効果が高いこと、この2点があるからです。

 一方、新型コロナウイルスは、空気感染が主で、感染力は非常に強く、無症状感染が多いので、感染者の囲い込みは不可能です。ワクチンの予防効果は限定的で、持続期間も数ヶ月です。世界的にワクチン接種が進むに連れて、皮肉なことに感染者は増加しました。我が国では、厚労省がワクチン接種歴の不明な感染者を未接種として集計するというデータの捏造を行い、外部から指摘されて訂正したところ、接種群のほうが感染者が多い年代があることまで判明しました。重症化を予防する効果があると今も専門家は言い続けていますが、そのデータは不十分です。「思いやりワクチン」という言葉で、周囲への感染を防ぐために接種が勧められましたが、接種してもウイルスの放出は防げないという研究結果が出ています。さらに、接種が始まる頃に私も指摘していましたが、ワクチンによって感染しやすくなる「抗体依存性感染増強」という現象も、ワクチンを受けた人に異常な抗体が作られていることが証明され、オミクロン株での感染爆発との関連が疑われています。ウイルスは変異しやすく、変異株への効果はありませんでした。国民の6〜7割が2回接種したら集団免疫が実現すると喧伝されていましたが、全くできませんでした。

 新型コロナの死亡率は季節性インフルエンザと同等になり、特に若者への影響はそれ以下です。予防接種救済制度で死亡一時金が支払われたのは、1月19日には天然痘の10倍を超える423人になりました。この程度の病気に対するこの程度のワクチンを、データを公表して十分な検証もせずに、今後も続けろと言う政府や専門家は信用に値するでしょうか。一旦立ち止まって、ワクチンだけでなく、コロナ対策全体を分析し、その効果や予算配分が適正だったかを検証するときです。遠からず新たなパンデミックはやってきます。


menu close

スマートフォン用メニュー