新庄徳洲会病院

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掲載日付:2022.08.31

Vol.252 コロナ世代と呼ばれる日

 極端な例であってほしいのですが、千葉県に林間学校で就寝時にマスク装着を強制し、そのために自宅でも練習するように指導している公立小学校があるそうです。過日、ラジオで京都大学大学院の明和政子教授が、「コロナ禍の今、子どもの心の発達を考える」という対談をしていましたが、その中でマスクが子供に与える悪影響は大人とは比較にならないほど大きいと指摘していました。40年前に小児科の初めての講義で教授が、「子供は大人のミニチュアではない」と話していたのを覚えていますが、明和氏も、子供の脳は大人の脳のミニチュア版ではなく、脳への影響は圧倒的に大きいと以下のように述べていました。

 大脳の視覚野や聴覚野は生後数か月から7〜8歳の影響を強く受けます。大人はそれを意識しているわけではありませんが、赤ちゃんをあやす時には表情を大きく変化させます。大人が笑うと赤ちゃんも笑いますが、そのときに沸き出す感情を笑いと結びつけることを学びます。生後6ヶ月からは口元を見るようになり、「ママ」などの口の動きを見ながら言葉を習得します。マスクをしている大人からは表情が読めません。「目は口ほどに物を言う」のは、赤ちゃんには当てはまらないのです。また、幼児期には脳の前頭前野という人間らしい複雑な考えをする部分が発達します。生後4年目からイヤイヤ期が終わるのは、これと関連しています。自分と他者の違いがわかるようになり、おもちゃを独り占めすると友達がどう思うかを考えられるようになり、表情を見ることで相手の気持を汲み取る事ができ始めます。実際の調査でも、コロナ騒動で子供の表情が乏しくなったとか、言葉の獲得が遅くなったという保育者の声が寄せられているそうです。さらに、明和氏は、親以外の他人との身体接触を通して脳は発達すると述べ、身体接触の重要性も強調しています。指を切って血を流している人の痛みがわかるのは身体接触から学びます。身体接触は大人にも重要で、愛情ホルモンと呼ばれているオキシトシンは、赤ちゃんを抱っこしている大人からも出ていることが証明されています。

 人の脳は25年かかってようやく完成しますが、他の類人猿には例のないことです。チンパンジーは子供が独り立ちする7歳になるまで、母親は排卵しないので妊娠できず、子育ては母親が専任で行います。ところがヒトは、授乳していても2年すると排卵が起こります。大型哺乳類の中で、攻撃力も防御力も逃走力もさほど優れていないヒトがここまで繁栄したのは、集団で生活し多くの子孫を残すことができたからです。脳が完成していない若い親でも、集団生活をするので、家族以外の力を借りて子供を育てることができたのです。明和氏はこのような共同保育の重要性から、核家族化が進んだ現代では家族に変わる共同体が必要で、その中で親としての脳や心(親性)が、子育てという経験を通してゆっくり育まれていくと述べています。

 子供の時間は大人と比べて遥かに濃密です。子供の1年は大人の数年から10年以上に匹敵します。コロナ騒動の2年間は子供にとっては大人の10〜20年間に相当すると考えるべきです。今マスクが外せなくなった子供たちが大きくなった時に、その時代が沈滞していることの責任を負わされ、蔑称として「コロナ世代」と呼ばれるのではないかと危惧します。コロナ世代を造った責任は我々現代の大人なのですが、我々はもういないかもしれません。そのときにあの程度の病気でこんなになってしまったのかと悔やんでも取り返しは付きません。コロナ騒動でのマスク装着やワクチン接種は、実質的には強制的に行っている人体実験です。発達途上にある子供は簡単に洗脳され、過剰なまでに環境に適応してしまいます。被害が甚大な病気でもないのに、未来ある子供たちを実験に巻き込むことの意味を大人はもっと真剣に考えなければなりません。


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