Vol.192 感染者連日100人超の意味すること
「東京の感染者数連日100人超」という見出しが新聞やテレビニュースで踊っています。「感染の第2波の入口にあり要注意」と発言している専門家や緊急事態宣言をもう一度という声も少なくないようです。この数字はPCR検査陽性者数というのが正しく、感染者という表現は厳密には不適切です。感染は病原微生物が体内に入り増殖する現象で、実は感染者の正確な数字は調べる方法がありません。PCR陽性とは、鼻腔や唾液にウイルスの遺伝子があるということで、感染とは別の現象です。また、感染しても無症状のこと(不顕性感染)もあり、「感染者=患者」とも言えません。言葉の定義はややこしいです。
東京都内の1週間平均の陽性者数は4月中旬には150人を超えていましたが、その後減少を続け、5月下旬には10人以下になり、その後再びゆっくり増加し、7月上旬で100人を超えました。確かに増加していますが、検査を受けた人数を調べると、最も陽性数が多かった時期は1日300人台でしたが、5月の連休明けから急増し1500〜2000人になりました。前半は、検査のハードルが高く、医師が必要としても受けられなかった人が多かったのに対して、後半では検査体制が整い、検査数が増えました。自粛解除により感染機会が増え陽性者数が再上昇したことは間違いありませんが、検査数が増えたことも少なからず影響しています。陽性者の年齢分布を見ると、40歳未満が前半は40%弱であるのに対して、後半は70%を超えています。「キャバクラ・ホストクラブ」などの風俗業界の従業員が積極的に調べられていることが検査数増加の主因ではないでしょうか。当然、後半の陽性者の割合は前半に比べてかなり低下しています。
一方、この間の重症者数や死亡者数はどうなっているでしょうか。全国の重症者数は大型連休中の300人をピークに減少を続け、6月末には40人を切っています。6月の死亡者数は全国で約80人、東京では20人で、東京では6月25日以降は死亡者はいません。医療機関がパンク状態というニュースも聞きません。以上のデータからは、深刻な事態が差し迫っているとは言えないと思います。政府も今のところ緊急事態宣言は不要との考え方で、私も賛成です。
初期には屋形船やライブハウスが感染の場と言われ休業に追い込まれましたが、密集して食事をしたり大声を出せばどんなところでも感染のリスクは高くなります。その後は、休業要請に応じないパチンコ店がやり玉に上げられ、知事が店名を公表する自治体もありました。パチンコ産業はギャンブル依存症を生み出す最大の場であり、同時に一部の公務員の天下り先でもあり、大きな問題を抱えていますが、新型コロナの標的としてやり玉に挙げるのはただの弱い者いじめです。パチンコをする人は台に向き合い会話もしません。パチンコ店が感染の場になったという証拠すらなかったはずです。国家の非常時にパチンコをするとは何事だという戦争中と変わらぬ国民感情とそれに便乗した政治家の浅ましい考えのほうがよほど問題だと思います。
以前は夜の接客業と呼ばれていましたが、最近では露骨に名指しされているキャバクラとホストクラブについても同じではないでしょうか。確かに感染しやすい場ですが、重症者が出ていないのであれば、多少感染が広がっても大騒ぎする必要はないと思います。以前も書きましたが、冬までは若者の感染はゆっくりと広がったほうがよいと思います。感染したくない人は行かなければよいし、感染よりも優先順位が高い人は気をつけて行くしかありません。ドイツの警戒基準を東京に当てはめると、1日1000人になります。これが適切かどうかはわかりませんが、少なくとも今の東京の陽性者数だけで大騒ぎする必要はないと思います。