Vol.83 早寝は三文以上の徳!
国立精神・神経医療研究センターの三島和夫先生によると、勤労者の睡眠時間は、男女とも日本人は最も少ない国民です。最も多く眠るフランス人女性の8時間38分に対して、日本人女性は7時間33分と1時間以上も短いのです。もう一つの大きな特徴は、欧州諸国では女性のほうが睡眠時間が長いのに対して、我が国は男性より20分も短いということです。「働くお母さんは眠れない」のは、日本の女性の労働環境が国際的に見ても厳しいということです。
母親の労働時間が長いほど、遅くまで起きている子供が多くなります。夜十時以降に寝る未就学児の割合は、母親の労働時間が一週20時間未満では35.5%であるのに対して、60時間以上では49.3%と約半数になります。現代社会では起床時刻を遅らせるには限界があるので、日本の子供は欧米に比べて1時間以上睡眠時間が短いのです。
睡眠不足の影響は重大です。米国の研究では、不眠症は他の慢性疾患よりも職場での事故や失敗との関連が高く、その経済損失は数兆円規模と考えられます。我が国の研究でも、睡眠が障害されると、作業効率は40%程度低下し、経済損失は総額3兆5千億円と見積もられています。
更に深刻なのが子供です。大人と違って眠気に打ち勝つ能力が乏しいので、食事をしながら眠ってしまうこともあります。授業中は先生の目があって寝れない就学児童は、いらだちが強くなり注意欠陥・多動性障害とみなされることもあります。計算などの特定の分野の学習障害が起こったり、中高生ではキレやすくなることもあります。
これらは全て寝不足による精神症状で、子供は感情面の影響が出やすく、大人はパフォーマンスの低下という形を取るのです。 適切な時間は年代や個人で異なるので、何時間という決まりはありませんが、 受験生も含めてあらゆる世代で削ってはいけないのが睡眠時間なのです。 私は小学校低学年まで夜8時には寝ていました。 理由は、夜は暗く怖い時間だったからです。暗闇がなくなった現代では、子供を早く寝かせるためにもっと力を注ぐべきです。夜遅くまでゲームをしているのは悪いことという認識はありますが、照明設備のあるグラウンドでボールを追いかけているのはどうでしょう。夜9時までボールを蹴っている子供は、寝るのは必然的に10時以降になります。それがどのような影響を及ぼしているかもう一度考えてみてはどうでしょう。
院長 笹壁弘嗣
新庄朝日 第715号 平成25年4月15日(月) 掲載