Vol.209 女子高校生の自殺倍増から考える
米国のウォール・ストリート・ジャーナルから世界59カ国の新型コロナの超過死亡が発表されました。新型コロナの流行により死亡数がどれだけ増えたかという数字です。データはそれぞれの国からの提供されたもので信憑性には疑問の余地がありますが、2020年の超過死亡は全世界で280万人になりました。そのうち新型コロナが直接死因となっているものは2/3以下で、残りは間接的に関連しているということです。最も多いのは米国で、別のデータでは20万人に達しています。多くの国で超過死亡はプラスになっている一方で、9カ国でマイナスに、つまり新型コロナの流行により死者が減った国がありますが、その中で我が国はずば抜けて減少幅が大きいのです。
速報値ですが、昨年の人口動態統計では総死亡が前年より9373人減少しました。これは11年ぶりのことです。一方で、自殺者は増加し750人多い20919人になりました。リーマン・ショック後10年連続で減少していたものが11年ぶりに増加に転じました。人口10万人当たりの自殺者数も11年ぶりに増えています。中身を見ると、男性が前年に比べて135人減少し13943人で11年連続で減少しているのに対して、女性は885人増加し6976人になりました。特に気になるのは若年者で、児童や生徒は、前年より140人増えて479人、過去30年で最多です。内訳は、小学生が前年より8人増の14人、中学生が40人増の136人、高校生が92人増の329人です。特に高校生の女子は67人から138人と倍以上に増えています。増加したのは昨年の5月以降で、動機はうつ病が最多です。この背景は今後の分析を待たなければなりませんが、昨年に起こった急激な変化ということは新型コロナの流行の影響があると考えてよいでしょう。新型コロナの流行またはそれによる社会情勢の変化により数十人の女子高校生が亡くなったと考えてもよいということです。ちなみに、この年代で新型コロナウイルスに感染して死亡した人はいません。米国ほどの被害があれば話は別ですが、我が国において新型コロナはこれほど社会を大きく変える必要のある病気なのでしょうか。もっと普通の病気として付き合うべきではないでしょうか。
癌を患った老医師が、自分は余命が短いので、もし新型コロナウイルスに感染しても、人工呼吸器やECMOなどの高度医療は受けずに若者に譲るという意思表示を示したカードを作りました。それに賛同する意見があった一方で、「高齢者は死ねというのか」という反論もありました。彼は決して他の高齢者に強要しているわけではなく、自分はそういう選択をすると表明し、それに賛同する人を募ったに過ぎません。私も彼と同じ行動をとると思います。高齢者は死んでもよいとは思いませんが、高齢者から死んでいく社会のほうが健全だと思います。新型コロナは幸いにも若者が大きな被害にあうことが少ない病気です。我が国は世界一の高齢化率であることを考えると、現状の死亡者数は奇跡的に少ないと言ってもよいはずです。
ある80代の芸能人が自分は100歳を過ぎても舞台に立つために、高度医療を若者には譲らないと発言していました。今はまだその選択は受け入れられるかもしれませんが、医療技術が進歩し医療費が増大する一方で、経済情勢が悪化していることを考えると遠からず優先順位をつけなければならなくなります。実はすでにその選別を医療者は押し付けられているのです。マスコミはキレイ事ばかり並べずに、現実に向き合うべきです。年齢はもっとも公平な基準です。社会的地位や学歴や人格で判断されるよりも、金の有無で判断されるよりも、フェアではないでしょうか。中高年と違って、今の若者は昨日より今日が、今日より明日がよくなるという希望を持てる時代を知りません。いい思いをした世代は、若者が希望を持てる社会を残すことに目を向けるべきです。世代間戦争などまっぴらごめんです。