新庄徳洲会病院

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掲載日付:2022.01.14

Vol.235 無症状の人は検査不要!

 予想より少し遅くなりましたが、1月になり始まった新型コロナの第6波は、陽性者の増加速度が早そうです。重要なことは医療を要する患者がどの程度いるかですが、相変わらずマスコミは陽性者を感染者と呼び、連日「感染者〇人!」と騒いでいます。オミクロン株が医療にかける負荷が弱そうなことは、南アフリカで入院率が4.5%とデルタ株の1/5以下で、入院した患者や死亡者の実数も減少していることからも明らかで、WHOも認めています。1月3日に厚生労働省が発表したデータによると、我が国の空港検疫で確認された新型コロナのオミクロン株の陽性者150人では、無症状死者が80%以上占め、有症状者も発熱・咳・喉の痛み程度です。

 オミクロン変異はこれまでとは異なり、旧型コロナウイルスの特徴を多く受け継いでいることがわかっています。血管の受容体に結合することが少なく、鼻や喉などの上気道で感染が起こりやすいので、カゼ症状が圧倒的に多く、重症化することが少ないことも科学的に説明可能です。ところが、我が国では重症化率が低くても感染率が高ければ医療は逼迫するので、これまで通り人流抑制とマスク着用などの感染予防対策を訴え続けています。1月9日には広島・山口・沖縄の3県でまん延防止等重点措置が適用されましたが、11日現在の重症者は、広島は2人、山口は1人で、独自基準の沖縄ではゼロという状況です。また、軽症または無症状者の割合は各地で90%以上と見積もられています。しかし今回の重点措置では、酒類を提供しないよう知事が要請できるなど規制は強化されています。全国高校サッカー選手権で陽性者が出たチームが準決勝で不戦敗となりましたが、有症状の選手が多く出たわけではなく、感染のリスクの低い屋外競技で、たとえ感染しても軽症なことが多い若者への措置としては明らかに過剰です。

 さらに心配なのは、全国的にPCR検査や抗原検査が無料で受けられるようになったことです。感染力の強さを考えると、これまで以上の陽性者が出ることが予想されますが、2類感染症のままでは、第5波以上に保健所の負担が増え、本当に医療を必要とする少数の人が多数の軽症者や無症状者に埋もれてしまって、救えるはずの命が失われてしまうことはすでに学んでいるはずです。我々は2年間で何を学んだのでしょうか。無症状の人が検査を受けるデメリットはメリットを遥かに上回るはずです。毎年、1000万人以上がインフルエンザに感染し、風邪を含めると全体では数千万人がウイルス感染症に罹りますが、医療が崩壊したことは一度もありません。つまり普通に対応すれば特別なことをしなくてもよいはずです。

 この期に及んで首相は、水際対策の継続と検査の拡大を「しっかり」やりますと表明しましたが、政治家が厳しい規制を行うのは、国民が支持するからです。感染が拡大時に、GoToキャンペーンを行った菅前首相は酷評されましたが、岸田内閣の支持率は上昇中です。おそらく首相も私が書いた程度のことはわかった上で、「様子を見ながら徐々に変更する」という道を選ぶのでしょう。方針を変え始めた自治体の首長もいるので、国民の考えが変わればよいのですが、それに強い影響力を持つマスコミの最大の関心事は、視聴率を始めとする大衆の注目度です。結局は民度が上がるしかないのでしょうか。今、国がやらねばならないことは、医療が必要な人に提供できる体制を維持することで、その他は優先順位が低いことを首相と担当大臣と分科会代表が説明すべきです。異論はたくさん出て、マスコミは揚げ足取りに励み、専門家も結果責任を回避するように振る舞うでしょう。亡くなった人を生き返らせることはできないのだから、人の生命が関わる問題では結局のところ誰も責任など取れません。だからこそ一人でも多くの人が当事者意識を持ち、自分にも責任があるという態度を示すことが大事なのだと思います。


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