新庄徳洲会病院

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掲載日付:2013.11.15

Vol.94 有力者に病院を紹介してもらうのは逆効果

 特別な扱いを受けるのは気持ちいいもので、そのためにいろいろと努力する人も珍しくありません。医療現場にも特別扱いはあります。例えば私も自分の病院の職員から、家族が病気になり手術が必要になったのでぜひ先生にと言われたら最大限の便宜を図ります。また、知り合いの医師から電話で直接頼まれた患者さんもできるだけスムーズに事が運ぶように努力します。「お前はコネのあるなしで態度を変えるのか?!」とお叱りを受けるかもしれませんが、この程度のことはどの世界にもあるでしょう。

 コネを使って特別扱いを受けようとする場合に注意が必要なのは、逆効果になるコネがあるということです。私の場合は、あまり面識もない、しかも医者でもない「有力者」からの紹介がそれに当たります。事前に相談もない場合は、患者さんには非がなくても、未熟な私は不快感が顔に出てしまいます。こういう患者さんが、診療時間の終了間際にやって来て、入院の必要もないのに、当然入院させてくれるのだろうという顔をされると、貴方がやっていることがいかに愚かであるかを長々と説教して、後で苦情の投書が届き後悔する羽目になります。

 有力者は、病院によって違うでしょうが、議員関係者は勘違いの代表選手です。これは、彼ら自身の責任というより、彼らを便利屋として使う周囲に問題があると思います。また、公的な病院であれば役所関係の、民間病院であれば取引先の企業などの「偉い人」が多いのではないでしょうか。自分がいかに顔が利く人間であるかを誇りたい人や、そういう人を利用する人は、どこにでもいます。

 なぜ、自称有力者の紹介が有害無益であるかを説明します。このような医療の素人からの情報は全く信用できません。見ると聞くとは大違いで、患者さんを診てびっくりということが少なくありません。医者からの紹介状がない場合は最悪です。また、このような形で紹介されてくる人は、初めから自分が特別扱いされることを当然と思っていることが多く、普通の扱いを受けると憤慨してしまいます。

 著名人の闘病記を読むと、彼らはほとんどが特別扱いされ、多くは特別な医療を受けています。ところが、それが最善でないことが多いのも事実です。善意の専門医がたくさん集まっても、並の医者のレベル以下の結果しか出せないことは珍しくありません。結論としては、かかりつけの医師から普通に紹介してもらうのが最善なのです。その際、紹介先に電話などで直接連絡してくれる医師は良心的と言えます。実は紹介先も有名な名医より普通の医者のほうが無難です。

院長 笹壁弘嗣
新庄朝日 第729号 平成25年11月15日(金) 掲載


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