Vol.286 アッパレ!チームK
9月18日に方丈社から「私たちは売りたくない! “危ないワクチン”販売を命じられた製薬会社現役社員の慟哭」が出版されました。これは、Meiji Seikaファルマ(以下明治)の有志が、自社からも発売されるmRNAワクチンに対する思いを、熱い気持ちで、しかし「一般公開された情報」に基づいて冷静に著したものです。メンバーの多くは明治の医薬情報担当者(MR)で、医療機関を訪問し、自社医薬品の情報を提供したり、医療関係者から情報を収集したりする役割を担っています。明治は、古くはペニシリンGやストレプトマイシンから、近年では耐性菌の代表であるMRSAに対する基準薬であるバンコマイシンなどの抗菌薬を提供しているだけでなく、インフルエンザワクチンの製造販売では国内の最大のシェアを占めています。
ワクチンの製造販売を行っている企業の社員が、自社でも取り扱うことになったワクチンについてこのように踏み込んだ内容の本を著したことに驚きましたが、売れ行きも凄まじく、発売2日目にはアマゾンでは売り切れになると同時に、多くの高評価が寄せられています。きっかけとなったのは、26歳の同僚社員である影山晃大(かげやまこうだい)さんが、ファイザー社製のmRNAワクチン接種の3日後に急性心不全で突然死したことです。大きな衝撃を受けながら、その死を無駄にしてはいけないと集まった有志が家族とも相談して、「晃大」の頭文字をとってチームKとして著し、出版に至りました。彼は元気いっぱいのスポーツマンで、トップクラスの営業マンでもありました。その死から1.5年後に、「予防接種健康被害救済制度」で認定されました。ある意味、自社に弓を引く行為であり、匿名とはいえ、その気になれば関係者は明らかになるでしょう。解雇されることはなくても、今後の待遇に影響する可能性は十分にあります。正直言って、私が彼らの立場であったとしたら、このような行動に加わるという確信は持てません。
彼らの主張は、①mRNAワクチンがあまりに速く承認され広く用いられたこと、②その有効性が恣意的に高評価されたこと、③その副作用がほとんど検証されていないこと、④これまでなら一旦中止されるような副作用があったにも関わらず定期接種になったことです。これは私が当初から訴えていたことと同じです。それに加えて、⑤新型のmRNAワクチンが自社から発売され、その営業活動をしなければならないことへの葛藤があります。文章は平易で、内容は専門的知識がない人でもわかりやすく良書と言えます。さらに今後のワクチンが進んでいく方向にも触れています。第一三共は、2020年にインフルエンザワクチンの販売を終了すると発表しました。その一方で、今回の新型コロナワクチンの定期接種で用いられるmRNAワクチンには、国内で初めて開発されたものが第一三共から発売されます。さらに不活化ワクチンは発売から撤退しましたが、mRNAワクチンとしてインフルエンザワクチンを発売する予定で、早ければ来シーズンから用いられます。さらに対象者が重複するので、接種が1回で済む利点を強調し、新型コロナと季節性インフルエンザの混合ワクチンも2年後には用いられるかもしれません。
巷では、明治から販売される予定の新しいmRNAワクチンであるレプリコンが騒がれています。この本でも強調していますが、レプリコンには未知の危険性はありますが、そもそも従来のmRNAワクチンに危険性があるのです。今後、様々な疾患に対するワクチンには、次々にmRNAワクチンが採用される可能性が高いと思います。インフルエンザワクチンがmRNAに変わったら私は接種しません。今回のチームKの行動は、幕末の志士に影響を与えた吉田松陰が黒船への乗船に失敗して囚われの身となって江戸へ送られるときに詠んだ、「かくすれば、かくなるものと知りながら、やむにやまれぬ大和魂」を思い出させます。