新庄徳洲会病院

menu

<

掲載日付:2025.11.28

Vol.304 前立腺肥大、尿路感染症、そして導尿の苦痛を味わう

 数年前から夜中に尿意で目が覚めることが多くなりました。加齢による前立腺肥大と考えていましたが、多いときには2〜3回になり、いったん目が覚めると眠れなくなり、日中の活動に支障をきたすようになりました。夜間頻尿の原因は加齢の他に、水分・アルコール・カフェインなどの摂りすぎもあるのでそれに注意して、さらに睡眠時の環境をできるだけ暗くしていましたが改善しませんでした。泌尿器科を受診したところ、同年齢の平均よりも2倍ほど前立腺が大きくなっていると言われ、前立腺や膀胱の筋肉を緩めて尿道を広げることで、頻尿や残尿感などの症状を改善する内服薬を約1年前から始めて、症状は少しよくなりました。

 その後も内服していましたが、11月上旬から少し熱っぽくなり、インフルエンザにでもなったかと思っていましたが、夜間尿の頻度が増えて10回も起きるようになり、昼間も急に尿をしたくなることが多くなり、排尿時には尿道の痛みも生じるようになりました。さらに尿意をもよおしても1回の尿量が少なく、勢いもなくなってきました。1週間以上泌尿器科外来がなかったので、それまで友人の内科医に受診して、前立腺肥大の薬をもう一種類追加してもらいました。症状は少し良くなりましたが、排尿時の痛みが悪化するため、1回の尿量を測定すると60mlしかありませんでした。下腹部が張っている感じはないものの尿が出せない状態で膀胱に尿がたくさん溜まっている可能性を考えて、排尿直後に膀胱に残っている尿(残尿)を測定することにしました。自分でやるつもりでしたが心優しい当直の看護師さんが快く引き受けてくれました。残尿は10ml程度しかなく膀胱から尿を出せない状態(尿閉)ではないと判断しました。肉眼的には透明でしたが、顕微鏡検査では少し白血球も見られたので、尿路感染症という結論に至りました。後に述べるような理由で、細菌培養を提出し、抗菌薬を処方してもらい、徐々に症状は改善しました。

 入院はもちろんのこと、訪問診察でも男性患者さんに尿道から膀胱にカテーテルを入れることは日常よくあることです。慢性期の患者さんを診ることが多くなって、毎月10回以上は行っているので、過去10年でも1000回以上は行っている医療行為です。私の尿道に入ったのは一時的に尿を出すカテーテルで、普段私が使用しているものよりかなり細いのですが、予想以上の痛みで、おそらく自分ではできなかったと思います。患者さんにどれほど苦痛を与えているかということに鈍感になってはいけないと日頃から自分に言い聞かせていたつもりでしたが、経験しないとわからないものだと痛感しました。尿道を刺激したせいか、それまでは排尿時だけだった痛みが、24時間続くようになり、抗菌薬が効いてくるまではかなりつらい日々でした。

 尿路感染症は、感染が起こる場所によって、腎盂腎炎・膀胱炎・尿道炎などに分類できます。私が医者として今回の私を診察したら、尿道炎かもしれないと考えて、患者さんには最近風俗などで怪しげな性行為をしませんでしたか?と聞いていたと思います。男性の尿道炎は、クラミジアや淋菌などによる性行為感染症のことがあるからです。私は身に覚えがないので、なぜだろうかと考えましたが、培養からは腸球菌という細菌が検出されました。後日泌尿器科を受診したら、主治医からは高齢になり前立腺肥大になるとそんなこともありますよと言われました。ようやく、元の状態に戻りましたが、炎症が治まった今なら、導尿をしてもあれほどの痛みはないのではという疑問があります。それを確認する方法は、やってみることですが、その勇気はありません。今後とも、前立腺肥大とは死ぬまで仲良く付き合うしかないので、遠からず2回目の導尿を経験するでしょう。その時に答えを知ることができるかもしれません。

掲載日付:2025.10.28

Vol.303 お尻は洗ってほしいと思っているでしょうか

 「ウォシュレット」で知られる温水洗浄便座は、医療・福祉向けに米国で開発され、1964年に東洋陶器(現TOTO)が輸入しましたが、あまり広まりませんでした。1967年に伊奈製陶(現LIXIL)が、日本人に合わせた国産品を発売しましたが、広く普及したのは1980年に東洋陶器が発売したウォシュレットです。1982年に始まったテレビCMで用いた「お尻だって洗ってほしい」というキャッチコピーが大当たりして、温水洗浄便座の代名詞となり、今では普及率が80%を超えています。由来は、レッツ・ウォッシュ(Let's Wash、洗おう!)だそうです。

 ここから尾籠(ビロウ)な話になりますがお許しください。数年前に妻との口論が、「誰がアンタのウンコの付いたパンツを洗っていると思ってるの!」とトドメを刺され終了したことがあります。入浴時に自らパンツを確認し深く反省した私は妻に謝罪の気持ちから、その後は石鹸で手洗いしてから洗濯籠に入れるようになりました。「探偵!ナイトスクープ」というTV番組で、「大人の男は誰でもウンコをちびったことがある?」という真面目な検証をしていたことを思い出し、まあ仕方ないかと思っていましたが、若い頃よりも汚れが増えたことにも気づきました。その時は、老化で肛門の締まりが悪くなったせいと思っていましたが、数年前に外国の医学雑誌で、肛門洗浄をすると、直腸内に入った洗浄液が浣腸と同じ原理で、高齢の男性では便失禁が起こりやすくなるという論文を読みました。それ以来、洗浄は最低の水圧で短時間で済ませるようになり、今でもその習慣は続いていますが、最近では便の汚れが減ったような気がします。

 仕事柄、多くの人の肛門を直視し、指や器械を挿入することも多いのですが、やはり昔よりも便が付着している肛門を見る頻度が増えた印象があります。肛門疾患の多くは生活習慣病であるため、排便習慣について問答すると、ほとんどの人が肛門の洗浄を行っていることがわかります。患者さんには、「紙でゴシゴシと強く拭くのはダメですが、勢いよく長時間洗うのもやめたほうがよいです」と言います。その他には、排便時間は3分程度にしてトイレに長居しない(その代わり回数が増えてもよい)、便意がないのにトイレにいかない、便意があったら我慢しないでトイレに行く、肛門を洗浄する際には肛門を広げて奥に洗浄液を入れない、などの助言をしています。現代社会は、清潔志向が過剰です。口や鼻に比べると、肛門から病原微生物が入ることは稀です。口から食道や鼻から喉の奥と、肛門の表面は同じ系統の細胞(扁平上皮)で覆われていますが、これは外界からの刺激に強く、表面を保護する役割を担っています。胃や直腸は別の系統の細胞(円柱上皮)で、直腸を保護する肛門は非常に短いのです。短いバリアで体内を保護している肛門は知的で弱い門であり、無理に開けてはいけない門なのです。手と同じくらい肛門をきれいにすることは、有害無益とは言いませんが、有害小益であることは確かです。

 ある肛門科のベテランの専門医が一般雑誌に、よく洗浄する人ほどに、肛門に便やトイレットペーパーが付着していることが多くなったと指摘し、過剰に洗浄すると皮脂腺が破壊され、色素沈着やかゆみが起こり、皮膚が炎症を起こして硬くなり肛門が狭窄して便が出しにくくなると記述していました。さらに、洗浄することでウイルス感染が起こり、通常は肛門性交で見られる尖圭(センケイ)コンジローマまでできることを学会で報告しています。肛門に便が着いていると、肛門はただれやすくなりますが、徹底的にきれいにしようとすると、逆に便がたくさん付着することになります。まさに過ぎたるは猶及ばざるが如しです。パンツの汚れがひどい人は、一度洗浄をやめて、やさしく拭き取るほうがよいと思います。とにかく強く洗うことはやめましょう。皆さんが考えるほどお尻は洗ってほしいと思っていないはずです。

掲載日付:2025.10.20

Vol.302 移民より優先すること

 労働力が過剰になると失業者が増え不景気なります。現役世代には安倍晋三元総理が今も人気があるようですが、それは経済政策で雇用を拡大して失業率を下げ「氷河期」を終わらせたからと言われています。労働力が不足すると給料が上がり雇用は促進されるはずですが、低賃金の外国人労働者を優先すると、日本人の雇用は進まず経済は停滞します。また、短期的には企業の利益は増えますが、オランダの調査からも、移民が増えると長期的には国家の経済損失は利益を大きく上回ることが予想されます。

 人口が減ると需要も減るはずですが、コンビニやドラッグストアは狭い範囲に乱立し、外食産業も似たようなものが次々に現れては消えていますが、これほどの供給施設が必要でしょうか。需要が減っているのに供給は増えているような気さえします。これを整理するだけでも、労働力が確保できます。次に、潜在的な労働力の活用です。「103万円の壁」を引き上げるとパートやアルバイトの労働力は増加します。また、もっと働きたい人の自由を奪っている「働き方改革」を止めることも有効です。この制度が医者にも適用されるのは、狂気の沙汰です。研修医の労働時間が制限されると研修が希薄になり、一人前になるまでに年月を要し、質にも影響します。過重労働は個別の対策により避けるべきで、労働時間を一律に制限することの弊害は、厚労省の役人が考えるより遥かに大きいと思います。副業を奨励する前に、あらゆる現場で今よりも働きたい人を活用することです。ある試算では潜在的な労働力は数百万人以上とも言われています。ただ、「労働は美徳」という観念が古事記の時代からあった我が国でも、「労働は苦役」という西洋的な考え方が定着した現代の若者がどうように行動するかは疑問でもありますが。

 機械化や人工知能(AI)を労働現場に導入する研究には大幅な予算を注ぎ込むべきです。医療従事者にとって腰痛は職業病ですが、パワーアシストスーツ(筋力を補って身体能力を強化する装置)は、高齢者や女性の負担を軽減し、人手を減らすことにも貢献します。ロボットも含めて積極的な研究と導入が必須です。医者の領域では、AIによる放射線科の画像診断や顕微鏡による病理診断は平均的な医師と同等になり、問診をして検査を計画する能力はすでに人間を上回っています。AIは感情的にならないので、人間より紳士的でトラブルも起こりにくい利点もあります。医師不足の解消や人件費の節約にも貢献します。電子カルテによる事務作業の軽減は進んでいますが、まだまだ不十分です。医療以外でも、路線バスの運行や高速道路でのトラック輸送の自動化は、法整備さえ進めば実現できそうです。同じ路線を交通法規を遵守して走るので、所要時間は少し長くなるかもしれませんが、安全性は高くコストは低下します。米国ではタクシーの自動運転も実現しており、事故率は人間の1/10で、運賃も安いそうです。

 上記のような自動運転や無人販売が普及するためには、国民にモラルがあり、治安が維持されることが前提になります。移民が増えると治安が悪くなると言うと、差別主義者のレッテルを貼られますが、経済難民が組織的に移住すると集団化します。90%の住民が特定の国の経済難民である集合住宅で、日本の習慣やルールが守られるでしょうか。可能と考えるのは、決してそこには住むことのない政治家や富裕層か世間知らずのおバカさんです。その地域には警察も手を出せなくなることは、欧州の例を見ても明らかです。だからこそ外国人の受け入れは慎重になるべきです。これまでの外国人の多くは日本の文化に興味を持ち、それを尊重して暮らしてきました。今進行している移民はこのような人とは全く異質で、大規模化しているのです。現状の移民政策では、社会保障費は増大し文化も破壊されます。人口減少と労働力不足を受け入れた上で、可能な対策を早急に始めるほうが、現実的かつ重要だと私は思います。


menu close

スマートフォン用メニュー