新庄徳洲会病院

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掲載日付:2021.05.01

Vol.214 迷走する緊急事態宣言

 4月23日に新型コロナに対して、東京・大阪・京都・兵庫の4都府県に、3回目となる緊急事態宣言が発令されました。この中で東京都は病床使用率が20%台で、まん延防止措置の基準は満たしているものの、緊急事態宣言の発令基準である50%には及びません。にもかかわらず発令しなければならない理由が明確に説明されませんでした。「医療体制のひっ迫」という曖昧な表現しかしない東京都の要請を政府も受け入れ、ほとんどのメディアも取り上げていません。「やっているような感じ」を見せることが重要視される風潮が1年以上経った今でも続いています。これは、政治家がやたらに口にする「スピード感を持って」と同じです。大事なことはスピード感ではなく、スピードです。

 また、これもほとんど知られていないようですが、まん延防止措置の基準が4月23日に厚生労働省から出された官報(国としての作用に関わる事柄の広報および公告)で変更されています。それによると知事の権限で酒やカラオケの提供を禁止できるようになりました。つまり、緊急事態宣言が解除されたときに、再び取られるまん延防止措置で、酒やカラオケの禁止措置が継続できるようにしたのでしょう。これは国会で審議されたわけでも、閣議で話し合われたわけでもなく、厚生労働大臣が出す文書で変更されています。しかもこの事実も多くのメディアはスルーしているのです。官民一体の翼賛状態と言っても過言ではないでしょう。

 人の行動を抑制することが感染の拡大をある程度抑える効果はあると私も思いますが、欧米のような私権制限のある都市封鎖でも大きな成果がないのに、我が国のような私権制限を伴わない緊急事態制限の効果はかなり限定的です。要するに行動制限は、医療崩壊を防ぐ手立てを取るための時間稼ぎという位置づけなのです。これまで1年間でできなかったことが、わずか2週間でできるとは考えられませんし、ワクチン接種を広めるにしても短すぎます。そもそも患者数の少ない我が国ではワクチンの効果も限定的だと思います。英国がワクチンにより検査陽性者が激減していると言われていますが、ワクチンを打ち始めたのと同時期に急激に減少しており、少なくとも初期の減少効果はワクチンによるものではなさそうです。マスクをやめた英国の検査陽性者数は現在の日本と同等で、我々はそのような状態に以前からいるのです。

 確かに大変な苦労をしている医療従事者がいることは事実ですが、少ない医療機関に負担が集中するのは、できるだけ多くの医療機関で分け合って診療することができないからです。二類感染症の扱いを廃止し、五類相当として扱うとこの問題は最も速やかに解決するはずです。現体制で対応できないならそれ以外の道はないと思います。過剰とも言える予防対策を止めると、労力も随分軽減するはずです。もちろん、それにより感染が拡大し死亡者が出る可能性もありますが、そのリスクを受け入れるほうがマシだと思います。

 あまり有効とは思えない緊急事態宣言をするよりも、試しに1ヶ月限定で五類相当にしてみればよいのではないでしょうか。それで、今よりも悪くなるようであれば、戻せばよいのです。最も流行している大阪の陽性者は直近の1週間で8000人弱で、人口比にすると千人に一人ということです。つまり一週間に99.9%の人は無関係なのです。普通、「99%大丈夫」と言われるとほとんどの人は大丈夫と安心するのではないですか。それよりもさらに10倍安全性は高いのです。緊急事態宣言を大多数が望む昨今の雰囲気は、先の大戦中の「欲しがりません勝つまでは」の精神と同じものを感じますが、実は受け入れ可能なリスクの中にいるような気がしてなりません。

掲載日付:2021.04.12

Vol.213 村井知事、仙台では肺が真っ白な患者が入院できないのですか?

 先日、病棟回診をしていると患者さんのテレビから、「肺が真っ白な患者が入院できない」という宮城県知事の声が聞こえてきました。調べてみると、4月2日に行われた県内の市町村長との会議で、仙台市を「まん延防止等重点措置」の対象にしたことを報告した後の記者の質問に答えて、「肺が真っ白で病院に入るべき人が、ホテルにいなければならない状況だ。」というものでした。ところが4月3日に行われた記者会見では、「仙台市青葉区の宿泊施設ではレントゲンで肺をみると白くなっているなど、本来は医療機関に入院すべき人が入院できずに療養していて…」と表現が穏やかになっています。ニュース映像でもレントゲンは確認できますが、遠目に見ると肺炎はありそうですが、「真っ白な肺」とは程遠いものです。前日の表現が不適切であることを指摘されて変更したのでしょうか。

 新型コロナウイルスに感染して肺が真っ白になっているということは、ひどい肺炎を起こしているので、酸素吸入などの呼吸管理が必須です。そのような患者が入院できずに、ホテルに待機しないといけないほど宮城県の医療体制は崩壊しているのでしょうか。4月1日現在の宮城県の新型コロナ用の病床数は270床で、入院患者、176人で占有率は65.2%です。重症患者用の病床数は24床で重傷者は9人です(ただし、同時期の厚労省の発表では病床占有率は35.8%、重症患者の占有率は15.4%です)。仙台市だけ重症患者が多い可能性はあり、実際に患者が受け入れ先がなくて100キロ以上離れた気仙沼市に搬送された例も報道されています。肺が真っ白の患者を受け入れられない状況が大都市仙台で起こっているということは、医療体制の問題で、その責任者は県知事にあるのです。実際の医療体制をコントロールしているのは県であり、その責任者は知事なのです。

 重症者が多くなれば、地域を超えた連携をすればよいのです。本当に県内で受け入れられないのであれば隣接する山形市に搬送することもできるはずです。仙台市と山形市は全国の県庁所在地で唯一隣接しており、病院間の移動は高速道路を救急車でサイレンを鳴らせば1時間以内で可能です。他県の重篤な患者を受け入れない制約が新型コロナにあるのであれば、それこそ知事の権限で何とかするべきです。4月1日現在の山形市にあるコロナ病床の占有率は県立中央病院が60%、山形大学付属病院は7%程度で受け入れ不能ということはありえません。

 私は田舎のヤブ医者ですが、仙台の医者が肺が真っ白の患者をホテルに待機させることはありえないと思います。医療環境は山形市よりも仙台市のほうが整っているはずです。このような誇張をして、新型コロナの脅威を煽ることで自分の政治責任を回避しようとしているのではないかというのはゲスの勘ぐりでしょうか。多くの政治家は、新型コロナの深刻さを誇張し、どんな政策を行ってもコントロールできないと言い訳をしているように思います(実際、独裁国家以外は政策と感染のコントロールはあまり関係ないように思いますが…)。このような政治家やそれに迎合する専門家と、視聴率を稼ぐために危険を煽る大手マスコミにより、多くの国民は過剰に恐れ、緊急事態宣言の解除に反対したり再発動を求めているように思えて仕方ありません。二類感染症を外すと病床の逼迫は解消されるはずですが、それが話題にもならないのも同じ理由です。ワクチンが普及して90%の効果を示しても、米国の人口あたりの感染者数は我が国よりまだ多いはずです。感染症が消滅するまでこの状態を続けるとすると、未来永劫続くことになります。夏目漱石の弟子でもある明治の物理学者寺田寅彦の言葉と言われている「正しく恐れる」という姿勢はどこに行ってしまったのでしょうか。

掲載日付:2021.04.01

Vol.212 ワクチン打ちますか?

 新型コロナワクチンの接種が、医療機関の従事者から始まりました。我が国ではmRNAワクチンが使われていますが、これは人類史上初めて用いられるタイプのワクチンです。これまでは病原微生物そのものや一部のタンパク質を人工的に合成して体内に入れ、それに対する抗体やリンパ球を体内に準備させるものでした。一方、今回のワクチンは、mRNAというタンパク質合成の設計図を身体に注射して、人体の細胞内でウイルスの表面にあるタンパク質を作り、それを異物と認識させます。短期間で大量のワクチンが作れるのが最大のメリットで、20年前から研究が進み、mRNAを自分の細胞に効率よく運搬する方法が開発され、一気に花開きました。実用化までの短さは驚異的で、欧米を中心とした先進国に深刻な被害が出たため、莫大な資金と人的資源が投下され、治験も心配になるほど短縮されました。もし途上国だけで流行していたなら、もっと致死率が高くてもこれほど短期間で実用化されることはなかったでしょう。

 今回のワクチンの有効率は90%以上と言われており、接種することで感染者が90%減少、つまり1/10になるので、流行地域ほど利益を受ける人が多くなります。これまでのところ日本と米国における人口100万人当たりの検査陽性者は3600人と9万人です。もしワクチンが初めから準備されて、その効果が日米で同等だとすると、この内の3240人と81000万人が感染から免れた可能性があります。日本は感染者が少ないので、ワクチンにより得をする人の割合も少なくなるということです。我が国はワクチンの入手に遅れを取っているだけでなく、自国での開発も欧米や中国に完全に遅れを取りました。科学技術分野でのこの悲惨な現実は、すぐに役立つものにだけ金や人を投入してきたことのつけです。被害の少なさを考えると、反省の意味を込めて、輸入は断念して6月頃に治験結果が出る自国ワクチンを待つというのも選択肢だと思います。

 さて、今回のワクチンを打つかどうかについて考えてみます。現在までに世界で4億回以上接種されましたが、急性期の深刻な副反応はほとんど起きていません。重症のアレルギー反応であるアナフィラキシー(アレルギーの原因物質の侵入により複数臓器に全身性にアレルギー症状が起こり、生命に危険を与え得る過敏反応)が起こる頻度は、これまでのワクチンよりは多く、我が国ではさらにその傾向が強いのですが、死亡例はありません。報告数が多いのは、厳しくチェックしている影響が大きいと思います。我が国はゼロリスクを求めるワクチン否定派の声が大きく、接種すべきものを定期接種していないためワクチン後進国と呼ばれています。今回も感情的に「殺人兵器」と呼んでいる政治家がいるようですが、今のところ言えることは、短期的な安全性はかなり高く、発症だけでなく重症化の予防効果もありそうです。遺伝子を注入することで、人間の遺伝子に変化が起こる可能性は極めて低いと思いますが、どれくらい効果が続くのか、ウイルスの変異により効果が変わるのか、中長期的な副反応(特に抗体依存性感染増強という抗体があるために免疫が暴走する現象)がどうなるか、などについてはわかりません。

 このワクチンは任意接種で、医療従事者でも受けない自由は保障され、接種するか否かで差別を受けることはあってはなりません。誤解を恐れずに言うと、人体実験が進行中の巨大プロジェクトで、長期的な効果も安全性も不明としか言えません。被害の少ない若年層への接種は急ぐ必要はないと思います。寝たきりや末期癌などの生命予後の限られた高齢者が、接種後に死亡している例が海外で散見されることを考えると、介護者に接種するほうがよいかもしれません。私は、早く打ちたいとは思いませんが、自分の順番が来たら受けるつもりです。私のような高齢でそれなりに元気な医療従事者は、もっとも実験台にふさわしいと思うからです。


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