新庄徳洲会病院

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掲載日付:2024.11.28

Vol.288 「直美」を知っていますか?

 今回の「直美」とは、人名の「なおみ」ではなく、「ちょくび」と読み、近年になり現れた医師のことです。平成16年から、医学部を卒業し医師国家試験に合格すると、基本的な知識や技術を習得するための初期研修を、厚生労働大臣の指定する病院で、通常は2年間受けることが医師法で定められています。目的は、医師としての人格を涵養し、将来の専門分野にかかわらず通常の診療において適切に対応できる能力を身につけることです。初期研修では、内科や外科、救急・麻酔科などの診療科で基礎を習得し、3年目からは、専攻医として専門科での本格的な修練を積みます。「直美」とは初期研修を終えてすぐに美容医療に進む医師を指し、「直ぐ」に「美容医療」に進むという意味で「直美」と呼ばれるようです。このような医師は、以前は極めて稀でしたが、美容医療の需要が増加し、若手医師の進路の選択肢になりました。実数は不明ですが、数年前にある週刊誌のコラムで初期研修後に約200人が直美になるという記事を読んだ記憶があります。毎年8000人以上が医師になっているので、2%程度はいることになります。

 美容医療の対象は基本的には健康人なので、保険診療ではなく自由診療で行われます。具体的には、目の下の脂肪を取る「クマ取り」、目の下にヒアルロン酸を注入する「涙袋」の作成、永久脱毛などが多く、比較的単純な処置なので経験の少ない医師でも対応ができるようです。美容クリニックの多くは都市部にあるので、医師も生活拠点を都市に置くことが可能で、労働時間が短く、緊急事態が少なく、その割に収入がよいということで、若手に限らず美容外科を目指す医師が増えています。美容医療大国のお隣の韓国では、日本以上に医師不足が深刻ですが、美容医療に進む医師が多いこともその一因となっているようです。

 私は医者になって41年目で、今でも外科医のつもりですが、美容外科には興味がありません。もちろん美容手術を受けることで、人生が明るくなる人もいるでしょうが、病気や怪我の患者さんにしか関心が持てないのです。もちろん術後の見た目は大事だと考えて、可能な限りきれいに仕上げるようには心がけていますし、乳房を小さくする手術や乳癌で乳房を失った人の再建にも興味がありますが、小さい乳房を大きくしたいという人とは関わりたいと思えないのです。

 昔に比べてテレビには美男美女が多数を占め、たまに見ると皆が同じ顔に見えます。これは化粧の発達もあるでしょうが、美容医療を利用している人が多いのかもしれません。「見た目で人を差別してはいけない」と言いながら、外見至上主義(ルッキズム)を平気でやっているのが今のテレビ業界ではないでしょうか。高校生男子が、1時間かけ身なりを整えるのは、私のような時代遅れの人間には時間の無駄としか思えませんが、美容医療の需要が減るということは、日本がもっと貧しくならない限り無理だと思います。供給も同様です。偏差値秀才から順に医学部への進学を勧める教育環境で医師になった若者が、「働き方改革」という名の「労働は美徳にあらず、苦役である」という風潮の中で、苦労して知識や技術を身に着けて患者さんに感謝してもらうことの喜びを感じることは難しくなりました。多額の税金を使って取得した医師免許が、美容医療に注がれるのは不健全であるだけでなく、国民の不幸を増やす可能性さえあります。私はタトゥーにも興味はありませんが、あれは医療行為というよりは装飾であり、医師よりも彫師がやったほうがうまくいきます。同じように、美容医療を一般医療と分けて、新たな資格を作り、低コストで提供するシステムを作るほうが、医療への負荷も減り、受け手も満足するような気がしますが、「楽して金を儲ける奴が勝ち組」という風潮がある限り難しいのでしょうね。

掲載日付:2024.10.25

Vol.287 教えて尾身先生!、このデータの分析は?

 9月29日のYahooニュースで、新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長を務めた尾身茂氏への「日本のコロナ対策、成功と失敗」と題した対談が公開されました。同氏は、ワクチンの薬害についてはどう捉えるのかという質問に次のように答えています。「ワクチンによる被害や死亡は、残念ながら日本では詳細なデータを取れるようなシステムになっていません。死亡した原因がワクチンなのか他のものなのか、ほとんどわからないという状況で、今は結論を出せないということになっている。精査するためのモニタリングシステムを日本は早く構築したほうがいいと思います。」つまり、我が国のデータの収集システムに問題があるということです。

 過剰とも言える官僚制度があり、コロナ騒動に百兆円を注ぎ込める我が国で、本当にデータが取られていないのでしょうか。静岡県浜松市の住民が情報公開請求を行い、2024年6月までにコロナワクチンを受けた全住民の、年齢・性別・接種日・生死(死亡している場合は死亡日)・ワクチンの製造番号(ロット番号)を収集しました。小児科医である小島勢二名古屋大学名誉教授は、そのデータから、ロット番号によって死亡率に大きな差があることに気が付きました。彼の分析は、2回接種で終了した人を対象としています。接種回数が多いとどのロット番号が影響したかを評価しにくく、逆に1回目で終了した人は少ないので母数が少なくなり評価が困難です。また、対象を70歳以上としたのは、若年者ほど死亡することが少なくなるからです。その結果、特定のロット番号では、接種者37人中34人が死亡しているという事実を突き止めました。

 ジャーナリストの藤江成光(ふじえ まさみつ)氏も、詳細に分析しています。まず、接種3日後までに111人が死亡していますが、副反応報告制度で国に報告されたのは、そのうちわずか6人(5.4%)に過ぎないという事実です。この制度は「念の為に」行うもので、現在までに2000件を超える報告がなされています。浜松市のデータを当てはめると、全国では数万件あってもおかしくないことになります。さらに、氏は数多くのロット番号と死亡者を年齢別に分析しています。それによると、70歳以上では、EY2173というロット番号は、312人に接種され、生存者は21人で死亡率は93.3%、またFA5756は、2054人に接種され死亡率は75.8%でした。高齢者に接種しているので、死亡率が高いのは当たり前という批判はあるでしょうが、他のロット番号では20%前後のものもあります。また、同時期に接種を受けていない人13426人では死亡率は25.8%になっています。ロット番号の違いで極端な死亡率の違いがあるのは間違いないでしょう。藤江氏は、70歳代や60歳代でも同様の比較をしていますが、いずれも同様の差が見られます。

 ロット番号によってワクチンに含まれるmRNA量にかなりのばらつきがあることは厚生労働省も認めています。mRNAの量が多いと、作られるスパイクタンパクや誘導される抗体も多くなるはずです。スパイクタンパク質が、免疫系に影響することや様々な臓器に蓄積することは今では明らかになっています。確かにこれだけで因果関係が科学的に証明されたとは言えないでしょうが、健康人に病気の予防のために用いるワクチンの安全性には、厳しいものが求められます。システムは完璧でなくても、今ある情報から分析すればmRNAワクチンを中止する十分な根拠になるのではないでしょうか。情報開示請求で分かったことを否定するのであれば、専門家として理路整然と反論すべきです。これまで国は、ワクチン未接種者のほうが、感染しやすいことや心筋炎になりやすいように見えるためにデータの改竄を行ってきました。それが発覚した後も、データを消去するだけで正式なコメントはしていないはずです。分析する立場の尾身先生の発言は全く理解できません。国民にロシアン・ルーレットをさせているとしか思えないのですが。

掲載日付:2024.10.02

Vol.286 アッパレ!チームK

 9月18日に方丈社から「私たちは売りたくない! “危ないワクチン”販売を命じられた製薬会社現役社員の慟哭」が出版されました。これは、Meiji Seikaファルマ(以下明治)の有志が、自社からも発売されるmRNAワクチンに対する思いを、熱い気持ちで、しかし「一般公開された情報」に基づいて冷静に著したものです。メンバーの多くは明治の医薬情報担当者(MR)で、医療機関を訪問し、自社医薬品の情報を提供したり、医療関係者から情報を収集したりする役割を担っています。明治は、古くはペニシリンGやストレプトマイシンから、近年では耐性菌の代表であるMRSAに対する基準薬であるバンコマイシンなどの抗菌薬を提供しているだけでなく、インフルエンザワクチンの製造販売では国内の最大のシェアを占めています。

 ワクチンの製造販売を行っている企業の社員が、自社でも取り扱うことになったワクチンについてこのように踏み込んだ内容の本を著したことに驚きましたが、売れ行きも凄まじく、発売2日目にはアマゾンでは売り切れになると同時に、多くの高評価が寄せられています。きっかけとなったのは、26歳の同僚社員である影山晃大(かげやまこうだい)さんが、ファイザー社製のmRNAワクチン接種の3日後に急性心不全で突然死したことです。大きな衝撃を受けながら、その死を無駄にしてはいけないと集まった有志が家族とも相談して、「晃大」の頭文字をとってチームKとして著し、出版に至りました。彼は元気いっぱいのスポーツマンで、トップクラスの営業マンでもありました。その死から1.5年後に、「予防接種健康被害救済制度」で認定されました。ある意味、自社に弓を引く行為であり、匿名とはいえ、その気になれば関係者は明らかになるでしょう。解雇されることはなくても、今後の待遇に影響する可能性は十分にあります。正直言って、私が彼らの立場であったとしたら、このような行動に加わるという確信は持てません。

 彼らの主張は、①mRNAワクチンがあまりに速く承認され広く用いられたこと、②その有効性が恣意的に高評価されたこと、③その副作用がほとんど検証されていないこと、④これまでなら一旦中止されるような副作用があったにも関わらず定期接種になったことです。これは私が当初から訴えていたことと同じです。それに加えて、⑤新型のmRNAワクチンが自社から発売され、その営業活動をしなければならないことへの葛藤があります。文章は平易で、内容は専門的知識がない人でもわかりやすく良書と言えます。さらに今後のワクチンが進んでいく方向にも触れています。第一三共は、2020年にインフルエンザワクチンの販売を終了すると発表しました。その一方で、今回の新型コロナワクチンの定期接種で用いられるmRNAワクチンには、国内で初めて開発されたものが第一三共から発売されます。さらに不活化ワクチンは発売から撤退しましたが、mRNAワクチンとしてインフルエンザワクチンを発売する予定で、早ければ来シーズンから用いられます。さらに対象者が重複するので、接種が1回で済む利点を強調し、新型コロナと季節性インフルエンザの混合ワクチンも2年後には用いられるかもしれません。

 巷では、明治から販売される予定の新しいmRNAワクチンであるレプリコンが騒がれています。この本でも強調していますが、レプリコンには未知の危険性はありますが、そもそも従来のmRNAワクチンに危険性があるのです。今後、様々な疾患に対するワクチンには、次々にmRNAワクチンが採用される可能性が高いと思います。インフルエンザワクチンがmRNAに変わったら私は接種しません。今回のチームKの行動は、幕末の志士に影響を与えた吉田松陰が黒船への乗船に失敗して囚われの身となって江戸へ送られるときに詠んだ、「かくすれば、かくなるものと知りながら、やむにやまれぬ大和魂」を思い出させます。


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