新庄徳洲会病院

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掲載日付:2023.05.12

Vol.263 本当に有効な少子化対策は?

 兵庫県の明石市は少子化対策に成功したことで話題になり、市長は全国で同じ対策を行えば、子供を増やせると発言していますが、隣接する自治体からは明石市のデータに疑問も出ています。合計特殊出生率が明石市では上昇した一方で、周辺の自治体では低下していますが、若者の人口にも同様の変化が見られます。つまり子育て支援が手厚い地域へ移動した若者が多いということです。子育て環境をよくしたから若者が移住し子供を作ったので、移住しなければ子供は生まれなかったという反論もできます。ただ、国全体で考えると子育て支援では人口の移動は起こるかもしれないが、出生率の増加までは起こりにくいような気がします。

 都道府県別に見ると、合計特殊出生率が高いのは沖縄を筆頭に西日本の人口の少ない県で、逆に低いのは大都市圏と寒冷地です。中でもずば抜けて低いのは東京都で、全国平均の15%以上も低く、東京が平均を押し下げていると言っても過言ではありません。総務省の最新データでは、東京都は唯一人口が増加している自治体です。つまり東京は人を引き寄せるが生み出さない街なのです。ということは人口の首都圏へ一極集中を是正することは少子化対策になるはずです。全人口の1/3が首都圏に集中しているというのはどう見ても異常です。首都直下型地震や富士山の大噴火が起これば首都機能がマヒするだけでなく、全国に壊滅的な打撃をもたらすでしょう。東京に核爆弾を落とされることを想像すると、安全保障上も避けては通れない問題だと思います。

 少子化と言うものの、実は夫婦から生まれる子供の数は最近では増加に転じています。日本は婚外子が少ないので、少子化を防ぐには婚姻する若者を増やさなければなりません。過去50年間で婚姻数は半分以下になり、特に男性の生涯未婚率は15倍以上になっています。ところが、若者の結婚願望は先進国でも最も高いレベルです。男では、正規雇用者や高所得者は結婚している割合が高い一方で、非正規雇用や低所得者は低いという現実があります。逆に女性は、高所得者は非婚の割合が高くなります。仕事をバリバリしている女性は、結婚や出産に対する欲求が低下して当然です。男女平等だからと社会進出を促し、結果的には安価な労働力として酷使し、その上子供まで生めと言うのはかなり酷な話です。現代社会は、結婚できない貧しい男と、したくない裕福な女を生み出しているのかもしれません。それはともかく、少子化対策は若者への経済対策が必須です。

 岸田内閣が「異次元の少子化対策」のために設立した子ども家庭庁は、厚労省や文科省からの出向した集団で、そこには巨額の予算が付くため、大きな利権が生まれます。それを、政治家は選挙に、官僚は天下りに利用し、さらに人権団体という怪しげな組織が利益を吸い上げことは、コロナ対策で1年分の国家予算に匹敵する予算のかなりが無駄に使われたことからも間違いないでしょう。しかもその予算確保のために、社会保険料の値上げや消費増税がされそうです。金を集めることより、所得を増やす経済対策を行い、有為な若者には返済不要の奨学金を配り、地方に生産業の拠点を作って人口を分散させ若者が結婚しやすくすべきです。フランスは給付金によって出生率を上げたと言われていますが、移民が子どもをたくさん生むようになったことが主な理由です。3人目の子どもを生んだ夫婦に1000万円を配れという識者もいますが、外国人を入国させて子作りをさせるビジネスが始まるのではと危惧します。少子化による人口減少は避けられない現実ですが、予測可能な変化です。経済対策や首都圏への一極集中の解消は、少子化対策としてというよりも、日本の安全保障として重要だと思います。元気な高齢者は働いて社会に関わり、ある程度の年金の減額や医療費の自己負担増額は受け入れるしかありません。我々高齢者は受けた恩恵以上のものを社会に還元していない世代であることを忘れてはなりません。


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