新庄徳洲会病院

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掲載日付:2022.05.09

Vol.246 引き算で考えるコロナ対策

 韓国の新型コロナの陽性者数は直近で3倍以上、死者に至っては6倍以上であるにも関わらず、日本よりも厳しかった新型コロナ対策(K防疫)を大きく転換し、飲食店での規制は4月18日で撤廃、5月25日からは季節性インフルエンザ以下の扱いにする予定です。高齢化率が韓国の約2倍なので、被害は我が国のほうが大きくなると予想していました。実際に死者数は今年の3月までは上回っていましたが、その後一気に逆転しました。K防疫は過剰だと思いますが、今回の変わり身の速さは、その善し悪しは別として、日本では考えられないものです。聞く能力は高い割に決断力は高くない我々の首相は、内閣支持率が下がらないと政策が変わらないかもしれませんが、効果を冷静に評価して不要なものを止めるという発想の転換が必要だと思います。

 まず、2類感染症並みの扱いから季節性インフルエンザと同様の扱いにして、保健所による患者の管理・濃厚接触者の追跡・無症状者の検査・医療現場での過剰な感染対策は止めたほうがよいと思います。医療現場でのPCR検査は廃止し、流行の程度や変異株の調査もインフルエンザと同じやり方で十分です。感染が拡大したらどうするという声があるでしょうが、被害が大きくなれば軌道修正すればよいのです。悲惨な結果を招く危険性が少ないことは2年以上の経験でわかったはずです。正解のない問題には微調整しながら向き合っていくしかありません。

 次に変えるのはお金の使い方です。2020年1年間のコロナ関連支出は約77兆円以上です。東日本大震災では10年間で33兆円程度なので、驚異的な大盤振る舞いであったことがわかります。補助金や給付金は大幅に縮小させて、新型コロナ関連の医療費自己負担分も通常通りにするほうがよいと思います。経済活動を活発にするためには、飲食店の営業や国民の移動を制限せず、減税するほうが効果があるのではないでしょうか。お金を配るよりも取る分を減らすほうが手間が省け、介在する民間業者の利権も生じません。私は経済にはド素人ですが、税金の中でも低所得者に最も利益を生むのは消費税だと思います。消費に対する罰金がなくなれば、消費は活性化するので、緊急事態にはゼロにすることはもちろんマイナスにすることも考えてよいのではないでしょうか。例えばマイナス5%であれば、100円のものを95円で買えるのです。消費税減税を口にする政治家は少なくなり、参院選後には増税もあるかもしれません。医療費に関しては、原則として月額約10万円以上の医療費は負担しなくてもよいという世界に例のない高額医療の補償制度があります。ワクチンもインフルエンザと同様に、高齢者に一部補助すれば十分です。

 お金を配るには時間とコストが掛かります。本当に必要なときには、ケチらずに速やかに届けるべきです。迅速に配るには対象を絞りやすくする制度が必要ですが、マイナンバーが銀行口座と紐付けられていない現状では困難です。これは個人情報保護を優先してきた国民にも責任があります。配る対象を絞るには膨大な手間がかかるので、民間業者に委託するため、今回も多くの利益を得た人がいます。これは医療業界にも言えることで、休床保障を始めとする給付金で医療機関は大いに潤いました。数年分の利益を短期間で得た病院もあります。国全体で年間数百億円という慢性の赤字体質だった公立病院群は、令和2年度には千億以上の黒字になりました。個人でも、ワクチンのアルバイトで通常のサラリーマンの月給を2〜3日で稼いだ医者もいるそうです。このような事実が医療への不信感を増大させ、国民を不幸にするのではと危惧します。無駄かもしれないものを止めることは、難しいことではありません。医療界が医療の本来の姿を思い出し、国民が多少の混乱と悲劇を受け入れる覚悟を持つことです。コロナウイルスを終息させることはできませんが、コロナ騒動を収束させることは難しくない段階に入りました。


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