Vol.220 科学者不信から科学不信、そして…
新型コロナに関しては、予防・治療・発生源など様々な分野で議論されていますが、先日は河野大臣が自らのブログでワクチンの危険性を訴える発言をデマと断定し批判していました。確かに全てのワクチンを否定する極端な考えの人もいますが、全てがデマであると言い切るのは、今回のワクチンの特殊性を考えると問題があります。個々の意見には是々非々で対応すべきですが、新しいワクチンを使い始めたばかりである現時点では、分からないことが多すぎます。
専門家は、分かりやすい結論を示すほうが支持を得やすく、分からないと言うのは勇気がいることです。知らないことを知ろうとし、分からないことを分かろうとするのは大事なことですが、知らないことは知らない、分からないことを分からないと言うことは、知識人には基本中の基本です。「俺の言うことにはエビデンスがある。」と言う人が増えましたが、エビデンスがあるから科学的で、科学的な事実は絶対的真理であると思い込むのは危険です。反対意見にもエビデンスがあることは珍しくありません。竹内薫著「科学の99.9%は仮説である」のタイトルにもあるように、仮説から始まり、定説となり、その後に否定された科学の常識は数多くあります。エビデンスにも優劣があり、「私の経験」は価値が低く、医学領域では多施設で行われた質の高い研究を総合して解析するのが最高レベルとされています。しかし、医学者が利益や名誉のために都合のよい事実だけを取り上げたり、データを捏造した事例もあり、これを見抜くことは専門家にも難しいことがあります。テレビのワイドショーで検査の重要性を強調している科学者が、検査会社から報酬を得ているということもありえるのが現代社会です。まして、民放のテレビ局がスポンサー企業である製薬会社の意向を忖度して報道するのは当然と言えます。
米国の国立衛生研究所(NIH)の下部組織である国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、コロナ対策のリーダー的存在で、時にはトランプ前大統領と対立しながらも、国民から広く支持されていましたが、数ヶ月前から急に評価が下がっています。日本のメディアはあまり報道していないようですが、彼が米国の非営利団体であるエコヘルス・アライアンスを通じて、中国の武漢にあるウイルス研究所にコロナウイルスの感染する機能を強化する研究を依頼し、そのために多額の公的資金が提供されていたがことが明らかになったからです。新型コロナウイルスの発生源として、この研究所からの流出であるという説は当初からありましたが、トランプ前大統領が生物化学兵器の可能性まで言及したこともあって、荒唐無稽なデマ、あるいは陰謀論という意見が大勢を占め、大統領選敗北の一因となったとも言われています。ファウチ氏は人工合成説を明確に否定し、現政権でも同職を続けています。この研究はオバマ政権で危険性が高いため禁止されたので中国で行われたもので、米国政府もその事実を把握してなかったようです。科学者が自己の名声や利益のために、事実を捻じ曲げた可能性があります。
新型コロナ騒動までは世界保健機関(WHO)のことを私は信用していましたが、テドロス事務局長の言動からその信頼は崩れました(彼は懲りずに再選を目指すようですが…)。我が国でも、日本医師会会長への信頼は低下し、「どの口が言う」と思う人が多くなったのではないでしょうか。余談ですが、私はある政党党首の言うことは全て間違いと思う習性があり、「誰が」ではなく、「何を」言っているかが大事であることを忘れてしまう傾向があります。それはともかく、科学者が信頼を失うと、科学までが信頼を失い、似非科学が広まり力を得てしまうことは、受験秀才たちがいとも簡単にオウム真理教に取り込まれたことからもわかります。情報の目利きになるためには、自分の頭で考え、議論は冷静にすることが肝要ですね。