新庄徳洲会病院

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掲載日付:2025.12.24

Vol.305 男は生理痛を理解できるか?

 12月17日の東京都議会で東京都女性活躍推進条例が、都民ファーストの会・自民党・立憲民主党・公明党・共産党・国民民主党などの圧倒的多数で可決・成立しました。この条例では、「性別による無意識の思い込みについての関心と理解とを深めることにより、雇用・就業分野における女性の活躍を推進するとともに、性別による無意識の思い込みの解消に向けて都が実施する施策に協力するよう努めること」という妙な日本語を用いて、都民の努力義務を規定しています。その中では、事業者の取り組み事例として「男性管理職への生理痛体験会」が盛り込まれ、そのために医療や美容の分野でも利用されている「電極を当てて筋肉を刺激する装置(EMS;Electrical Muscle Stimulation)」を用いるのです。

 東京都の政策はこれまでも首を傾げたくなるものが少なくありませんでしたが、今回の条例もその一つです。賛成した都議会議員とともに、条例策定に関わった専門家にも疑問が2つあります。1つは生理痛を下腹部への電気刺激で再現できるのかということです。医療関係者であれば、「腹痛」の講義で「体性痛と内臓痛」を習っているはずです。前者は、皮膚・筋肉・骨・関節・腹膜などの組織が刺激されて起こる痛みで、場所がはっきりわかるのが特徴です。後者は、内臓が原因で起こる痛みで、部位がはっきりせず、強さは様々で吐き気や冷や汗を伴うこともあります。生理痛は、医学的には月経痛と呼ばれるように、生理前や生理中に起こる下腹や腰の痛みのことで、子宮内膜から分泌されるプロスタグランディンにより子宮が収縮することが原因と考えられ、日常生活に支障が出ると月経困難症と診断されます。皮膚を通して筋肉を電気刺激することで、体性痛は起こせても、内臓痛である生理痛が再現できるとは思えません。

 2つ目の疑問は、内臓痛である生理痛は、日常生活に支障ないことから寝込むことまであり、数値化できるようなものではないので、それを他者に理解させることが可能かということです。また、同じ人でも、ストレス・生活習慣・加齢・出産経験、子宮内膜症などの病気などによって、重くなったり軽くなったり、随伴する症状も変化します。このような痛みを、同一の刺激で、感受性の異なる男性に伝えられると考える人が、日本の首都の行政の中枢にいて、その条例を支持する都議会議員が圧倒的多数であるというのは如何なものでしょう。生理痛を男性管理職に体験させることを企業の努力義務として、そのために多額の助成金を出すというのが今回の条例です。生理痛を体験させるために、すでに多くの企業が宣伝活動を始めています。このようなことに都民の税金が使われるのは、都民以外には無関係ですが、全国に広がることは容易に想像でき、実際すでに各地の男子高校生に対して体験させる活動が広がっています。

 生理痛で働けない人が休暇を取れることは労働基準法で規定されており、違反者には罰金が課されます。わざわざ不要な規制を作って、多くの人を苦しめ、一部の人が利権を貪る構造は、LGBT理解増進法と同じです。LGBTでは、弱い一般女性や若者を苦しめ、今度は男性を苦しめようという魂胆でしょうか。推進派は、科学的な考え方ができない人・差別をでっち上げてそれに反対することが生きがいである人と、金銭や社会での影響力を得ようとする人としか思えません。中国では生理痛の体験だけではなく、更に強い電気刺激を加えて分娩の体験も結婚前の男性に求めることが流行しているそうです。今年2月には婚約者の母親から求められてこれを受けた男性が、1週間後に小腸が壊死して緊急手術を受けたというニュースがありました。因果関係は証明困難だと思いますが、誘引になった可能性はあると思います。少なくとも同じ原理である美顔器より有害でしょう。愚策の代表である太陽光パネルと同じく、EMSも中国製かもしれません。


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