Vol.285 どうする? 今秋のコロナワクチン
10月1日から新型コロナワクチンの定期接種が始まります。接種日に65歳以上、または、60歳以上で基礎疾患や免疫機能に障害のある人が対象で、国と自治体から補助金が出ます。自己負担額は、ゼロから全額まで自治体による差が大きいですが、概ね2〜4千円程度になりそうです。対象外で希望する人は任意接種となり、全額の1万5千円程度が自己負担になります。種類は、従来のmRNAワクチン(ファイザー、モデルナ、第一三共)と「レプリコン」と呼ばれる新型のmRNAワクチン(明治製菓ファルマ)とスパイクタンパク質を合成した組み換えタンパクワクチン(武田薬品)で、約3200万回分(約80%が従来のmRNAワクチン)が供給される予定です。
一般にワクチンを接種すべきか否かは、①その病気の重篤度、②ワクチンの効果、③ワクチンの副作用の頻度と程度の3つを比較した上で、経済合理性があれば行うものだと思います。例えば天然痘は感染力が強く死亡率も20〜50%と非常に高く、ワクチンの有効性が高いので、予防接種健康被害救済制度による死亡一時金支払い件数が42件と副作用が強いけれども定期接種となり、撲滅されました。また、インフルエンザは小児の死亡例があり、ワクチンの予防効果は30〜60%と高いとは言えませんが、安全性が高いので、国民の約10%、高齢者の約25%が受けています。2022年の段階で、新型コロナの重症化率と死亡率は、全年代で季節性インフルエンザと同等もしくはそれ以下で、ワクチンの感染予防効果もほぼないと厚生労働省も認めています。重症予防効果があるので対象者を限定して定期接種になりましたが、その効果の検証は不十分で透明性も欠きます。最大の問題は、ワクチンの副作用の評価がされていないということです。厚労省が先日発表したデータでは、死亡一時金が支払われる件数は800人を超えました。これは我が国で行われたすべてのワクチンによる件数の150件を大きく上回っています。しかもそのうち200人以上が突然死です。この事実だけでもこのワクチンはいったん立ち止まるべきです。コロナ騒動初期に私も懸念していた抗体依存性感染増強は、その抗体も証明され、接種者のほうが感染しやすいのではという疑いも消えません。循環器系や免疫系への影響も取り沙汰されています。
新しいタイプのmRNAワクチンであるレプリコンは、mRNAが体内で自己増殖するので、注入するmRNAの量が少量で済み、生産効率も優れ、抗体産生効果が長続きするという利点があります。米国で開発され、ベトナムで約1万6千人を対象とした治験が行われ、従来のワクチンと同等の効果と副反応を認めました。我が国では約9百人を対象にした治験で、抗体の持続効果を認め、世界で初めて承認されました。今回の定期接種で用いられるかどうかは未定ですが、副作用も従来型と同等と考えたほうがよいでしょう。レプリコンを接種した人から、ウイルスのようにmRNAが未接種者に伝染するという説(シェディング)もあり、レプリコンを接種した人の立ち入りを断ると表明している医療機関もありますが、さすがにこれは行き過ぎです。残る蛋白組み換えワクチンはこれまで用いられてきた技術で安全性は高いかもしれませんが、新型コロナの人体への影響の少なさを考えると、すべての年代で接種するメリットは、デメリットを超えないと思います。
私の周りでも新型コロナは、「普通の風邪」という印象です。高齢者が多い病院ですが、直接死因になった患者さんは、オミクロン以降はいないと思います。そのような病気に人類史上初めて用いるmRNAワクチンをこれほど前のめりになって使い続ける意味がわかりません。私は定期接種の対象ですが受けません。病院としても接種を標榜する医療機関としては手を挙げないことにしました。患者さんから相談されたときには、「お勧めしませんが、コロナで死ぬときに受けておいたらよかったと後悔したくないなら受けるしかありません。」と答えています。