新庄徳洲会病院

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掲載日付:2022.07.11

Vol.250 徳洲会の新体制に望む

 6月25日に理事長選挙が行われ、東上震一副理事長が徳洲会の第4代理事長に選出されました。ご存知の方も多いと思いますが、6月初めに「後継者争いで大モメ」という週刊誌記事が出ました。8年前の選挙違反事件後3回目の理事長選挙でしたが、今回も混乱を招いたことは、大変残念であり、理事の端くれとして責任も感じます。執行部はこの件について調査をすると表明しました。その結果、万が一でも新理事長が処分を受けるようなことになってはいけないので、調査結果が出るまで選挙を延期するよう主張しましたが、予定通り行われました。

 過去2回は選挙の規定もなかったので、今回は事前に選挙管理委員会を設置して、投票前に所信表明が行われ、その後に質疑書を提出し、それに対する候補者からの回答も得られるようになりました。これは一歩前進と言えますが、所信表明はインターネットでの配信で、質疑書は選挙管理委員会が要約して候補者に閲覧され、それに対する回答も文書での公開となり、対面で討議が行われる機会は一度もありませんでした。これは、前回の選挙において理事会が紛糾したのでそれを避けようという配慮かもしれませんが、冷静に議論できる集団でないと理事会がみなされていると私は感じました。今回の改革は、ひいき目に見ても一歩前進一歩後退と思われ、理事会でそのように発言しました。投票結果は尊重し、新体制には微力ながら協力する覚悟です。その上で、新旧の理事長に以前からお願いしてきたことを以下にまとめます。


1 徳洲会の組織管理体制(ガバナンス)の構築
 徳洲会は3万7千人以上の職員を抱える巨大な組織になりましたが、その大きさゆえに運営が困難になり、崩壊しかねない不安を感じます。徳田名誉理事長は巨人であり、稀代の天才であったことは間違いありません。彼でしか徳洲会を起こし発展させることはできませんでした。不幸にして筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病に罹患し、陣頭指揮ができなくなり、その後は実質的に鈴木元理事長がリーダーとなり徳洲会を発展させました。個人商店として始まった徳洲会を組織化した鈴木先生の功績は高く評価します。しかし、徳田先生が名目上でも頂点に君臨し続けたことが、その後の徳田ファミリーの暴走を許したのではないでしょうか。また、鈴木先生が2年前に突然辞任を表明した後の理事長選に再度推薦を受けて出馬した理事会での批判の応酬は、執行部の日頃の言動との落差の大きさに私の頭は大混乱に陥りました。徳洲会という大きな組織はもはや個人のものではなく、職員や患者さんや取引業者やその家族まで含めて考えなければならない社会的責任があります。

 新理事長のもとでは、徳洲会にふさわしい管理体制を整えなければなりません。基本は透明性を保つことと説明責任を果たすことです。組織として意思決定がどのようになされているのかは、理事である私にもよくわかりません。「社員総会」がどのように構成され、どのような形で行われているかを明確にすべきです。執行理事会でのやり取りも公表すべきではないでしょうか。安富祖前理事長は、理事長就任時に「和をもって貴しとなす」を基本とすると表明されました。これは日本が世界に誇る民主主義の精神ですが、単に「皆で仲良く」というものではないと思います。いろいろな考えを持った人間が、心を一つにするというのは新興宗教でも難しいのではないでしょうか。現に勢力争いは8年以上尾を引いてきました。考え方の違いを受け入れた上で、決断する時には血を流す覚悟も必要です。「命だけは平等だ」という徳田イズムを共有しながら、変えるべきところを変えていくためには、異なった考えの人間が、冷静に議論して集合知を得る環境を作ることできるかが最重要課題だと思います。


2 現場の意見をどのように取り上げるか
 新理事長が全国の病院や施設を廻り、現場の声を聞くと表明されたことは素晴らしいと思います。コロナ騒動以降、対面で意見交換する場が激減したことは大変残念です。インターネットで行われる「経営戦略セミナー」は、経営分析にほとんどの時間が使われています。経営分析も実質的には大きな病院だけが対象となっています。ときどきはそれ以外のことに時間をかけることを検討してもらいたいと思います。それができないのであれば、ブロック会議を復活させたり分科会を設けるなどの対応を望みます。インターネット会議でも、本来可能である双方向性が十分に活かされていないと思います。
 また立場が弱く現場の意見が発信しにくい職種や、看護部など大人数で声が届きにくい職種の声を取り上げる環境を作るべきです。大きな集団は序列化が過剰になり、その頂点に立つものは理事長よりも大きな権力を持つ可能性さえありえます。各部会に目を配ることは難しいと思いますが、徳洲会を愛する弱い立場の人を大事にすることは最優先で考えるべきです。


3 徳洲会だからこそできる研究を
 最新の医学研究を否定するものではありませんが、急性期から慢性期の病院や多数の介護施設を抱える我々にしかできないことがあります。例えば現場を知るからこそ発想できる介護用品や医療介護従事者の負担を軽減するロボットを開発することは、日本の医療全体に貢献できます。このようなことが行われれば、日頃発言する機会の少ない病院や介護施設の職員のモチベーションも上がるのではないでしょうか。


4 無駄な医療への取り組み
 我が国の医療改革にとって最優先に考えるべき課題の一つが無駄な医療を抑制することだと私は考えています。そのために始まった「Choosing Wisely(賢い選択)」は世界的に話題になり、我が国でもChoosing Wisely Japanが発足しましたが、残念ながら浸透しているとは言えません。無駄な検査・無駄な薬・無駄な手術などを抑制することは医療費の抑制のためだけではなく、国民の利益になるという考えに立って、徳洲会が率先できればすばらしいと思います。個別に取り組んでも、経営難に陥る可能性が高いので、徳洲会のような大きな組織が取り組むことで、厚労省を巻き込んだ医療改革につながれば、徳洲会の存在意義も更に大きくなります。

 今後とも上記のことを信念として職務にあたります。

2022年7月9日  新庄徳洲会病院 笹壁弘嗣(ササカベヒロシ)


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