新庄徳洲会病院

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掲載日付:2022.08.10

Vol.251 天災? 人災!

 7月下旬に行われた全国高校総体のサッカー競技で、一人の選手が発熱しPCR検査で陽性となり、その高校は大会規定により出場を辞退しました。厳しい予選を勝ち抜いて掴んだ代表の座でしたが、たった一人が感染しても出場を辞退しなければならない大会規定とは一体何なのでしょう。他の選手も気の毒ですが、陽性となった選手の心情は察するに余りあります。政府も専門家もウィズコロナと言いますが、未だに多くの現場では実質的にはゼロコロナです。世界一の感染流行地となった日本で、ウイルスに接したことがない人はほぼいないと考えるのが妥当です。

 政府もようやく2類相当の分類を見直すことを検討すると発表しましたが、第7波が終了後のようです。2年前の春から私は、季節性インフルエンザと同等の5類で十分と発信していましたが、少なくともオミクロン変異により、感染率が高くなり重症化率・死亡率が明らかに低下した時点で行うべきでした。さらに感染率が高くなった今でも継続していくのは正気の沙汰とは思えません。医療が逼迫するのは、無症状者や軽症者を見つけるためにPCR検査を過剰に行い、マスコミに洗脳されて怯えた陽性者が医療を必要としないにもかかわらず医療機関に集まることと、医療従事者が自宅待機を強いられることが原因としか思えません。

 PCR検査の陽性者を増やすために、無料の検査を始めたことも異常ですが、検査を受けると500円程度の商品券を配っている検査所まで現れました。検査終了時には、「3日に1回、何度でも受けられます」と言われ、さらに検査を紹介した人にまで商品券が配られる事態は、税金を原資としたネズミ講と言えます。生命保険会社が昨年末から販売した「コロナお見舞金」も陽性者の急増により販売中止となりました。似たような話は医療の現場でも見られ、2類相当を変えたくない医療機関があるとは思いたくありませんが、確保病床の対象病院では、入院患者の有無に関わらず1日につき一床あたり7万数千円から重症では40万円以上の収入があります。

 遅きに失したとは言え、医療逼迫の恐れからか、日本感染症学会などからも、リスクの少ない軽症以下の陽性者は3日前後様子を見てから受診するようにとのコメントが出ましたが、重症者の状況もよく考える必要があります。日本医科大学の高度救急救命センターに搬送された脳卒中の患者が、コロナ陽性と判明したためコロナの重症者用の病床に入院し、8床が満床になったというニュースがありました。その8人の中で、コロナによる重症者は1人だけで、7人はコロナ以外の重症者がPCR陽性となったものです。おそらく同様のことが全国各地で起こっているはずです。8月3日時点で重症者数は全国で478人ですが、NPO法人日本ECMOnetの集計では、同時点で人工呼吸器または人工肺で管理されているのは72人です。この差は、中等症以下の患者が重症病床に入院していることと、日本医大と同じ状況によるものでしょう。

 ただちに2類相当から季節性インフルエンザ並みに変更し、濃厚接触者の追跡や無症状者へのPCR検査をやめるべきです。それには専門家の科学的意見よりも政治家の毅然とした決断が必要です。専門家には様々の意見があり、中には完全に正反対のものさえあります。様々な対策がエビデンスに基づいてなされたのでしょうが、これまで有効なものがほとんどなかったことは経験的に気づいているはずです。ある程度の科学的根拠を示した上で、国民を守るためにこうするのだと発信することが首相の責務です。コロナ騒動は天災ではなく人災の面が多いと思います。メディアにより洗脳された国民を目覚めさせることができるのは、先の参議院選挙のポスターで、岸田首相の横に大きく赤字で記されていた「決断と実行」しかありません。


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