新庄徳洲会病院

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掲載日付:2021.10.15

Vol.228 イベルメクチンは是か非か

 線虫という寄生虫感染の治療法を発見した功績で、2015年にノーベル生理学・医学賞を大村智氏が受賞してイベルメクチンは有名になりました。もともとは細菌感染に有効なマクロライド系の抗菌薬ですが、主にアフリカなどの途上国で流行する寄生虫感染症であるオンコセルカ症による失明や足が象のように大きく膨れ上がる象皮病などの特効薬として、1980年代から数億人に使用され数多くの人を救ってきました。今度は新型コロナウイルスが細胞や細胞の核の中に侵入することを防ぐことが実験で認められ、実際に使用した結果からも有効である可能性が示唆されました。高額な新薬が使えない途上国では、治療薬としてだけでなく予防薬としても配られ、劇的な効果を示した報告もあります。

 一方でWHOを始め先進国ではその有効性は否定されています。今年3月に治療と予防効果と安全性を示した論文が出ましたが、それが捏造であると指摘され、掲載が撤回された事件がありました。一方でこの指摘への反論も表明されています。安価で有効な治療薬に予防効果もあると、様々な製薬会社が巨額の研究費をつぎ込み、当たれば莫大な利益を生む治療薬や予防薬が日の目を見なくなるから、このような否定的な見解を出したという疑惑さえ囁かれています。確かに、新薬の1/1000以下の低コストで、使用経験も十分に蓄積され安全性も高いとなると人類には福音ですが、今回の騒動を利用して大儲けをしようとしている勢力には大きな脅威となります。

 もともとマクロライド系抗生物質は少し変わったところがあり、1回の内服で効果があるものや、抗菌作用以外の有効性が話題になることが以前からありました。膵臓の手術後に腸の動きを早く戻す効果があり術後の経過が改善するという論文があり、20年前に私も使ったことがあります。私がイベルメクチンそのものを処方したのは疥癬の患者さんに1度だけだと思います。我が国でも一部の医師は新型コロナに対して積極的に使用しているようですが、流通量が少なく個人輸入も行われているようです。また、動物に使用されるものをヒトに転用して副作用が出た例もあるそうです。現段階での使用は難しいかもしれませんが、我が国で発見された薬が話題になっているのだからこそ、国を挙げてその有効性を検証すべきではないでしょうか。

 大村氏が名誉教授を務める北里大学は、昨年から臨床治験を開始しました。人手と資金が不足し停滞していましたが、日本の製薬会社が協力に名乗りを上げ、公費の助成もあり、近々結果が発表される所まで来ているようです。もっと早い段階で国が資金援助を行っていれば、すでに結論が出ていた可能性もあります。公平性を保つために北里研究所以外の施設も巻き込み、できれば日本以外の流行国も含めた研究にすればより信頼性も高められたでしょう。役に立つ学問(すぐに金儲けができる研究)を優先し、基礎研究への投資を惜しんだため、ワクチン開発では遅れを取りましたが、既存の薬の有効性を確認するのであれば十分に対応できたと思います。特許切れのため利益がもたらされないこととは無関係でしょうが、イベルメクチンをもともと製造販売していた米国のメルク社は、使用には当初から反対の態度をとる一方で、新型コロナの軽症患者に経口で用いるに抗ウイルス薬を発売しました。重症化や入院を半減させる効果があるようで、米国のFDAに緊急使用の承認を申請しています。この薬の値段が製造コストの40倍であることが米国内で批判されているというニュースがありました。製造コストの40倍というのは、莫大な開発費をかけても実用化されるものが僅かであることを考えるとやむを得ないのかもしれませんが、このような現実を見せつけられると、実はイベルメクチンが有効であるという事実が隠れているのではないかという気もするのですが、ゲスの勘ぐりでしょうか。


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