Vol.241 マスク拒否の政治家はワガママ野郎??
2月6日に釧路空港から羽田空港に向かうエア・ドゥの旅客機内で、広島県呉市議会議員のT氏がマスク着用を拒んだために離陸前に降ろされていたことが発覚しました。客室乗務員による再三のマスク着用要請を拒否したため出発が1時間以上遅れ、40数名の旅客が影響を受けました。「他の乗客に不快感や迷惑を及ぼし、安全や健康に危害を及ぼすおそれがあったから」と会社側は説明しています。この報道後に、T氏には多数の批判が寄せられ、呉市議会は政治倫理審査会を開き、倫理条例に違反があったかを検討し辞職勧告決議などを出すとしています。
T氏は日頃からマスク着用の強制に反対の立場を明確にしており、往路の全日空機では、事前に説明し了解を取り、マスクは着用せず、周りに迷惑をかけないように最後尾に着席したそうです。エア・ドゥ機への搭乗に際しても同様の申し出をして、了解を得たのですが、客室乗務員には伝わっておらず、最終的には機長の判断で降ろされました。国土交通省の見解は、航空機内でのマスク着用の義務はなく、あくまでもお願いということです。もともと飛行機や新幹線の換気能力は非常に優れており、数分間で空気は入れ替わります。したがって、咳やくしゃみがよく出る人以外がマスクをすることで周囲への感染を防ぐ効果は乏しいと考えられます。実際、満員電車でもクラスターになったという話は2年間ありません。
2年前にエア・ドゥでは、「ご搭乗の際は必ずマスクをご着用ください」として、《新型コロナウイルス感染拡大防止のため空港をご利用されるお客様にマスクの着用をお願いしておりましたが、今後においては、エア・ドゥ便をご利用いただくお客様と社員の安全・安心を守るため、空港および、機内でのマスク着用の徹底についてお願い申し上げます。健康上の理由等、特別な理由がない限り、マスクの着用を拒否される場合は、ご搭乗をお断りすることがございます》とアナウンスしています。この規定に反したT氏の行動は、航空法の「安全阻害行為」にあたり、機長には飛行機から降ろす権限が認められるという解釈になるようです。
マスクの効果を過大評価している我が国では、安心をもたらす効果は大きいのですが、不適切な使用法が目立ち、安全とは結びついていないのが現実です。本来はマスクの上縁を鼻骨と頬骨にしっかりと沿わせW字にすべきですが、多くの人は何もせずに着けるのでU字になっており、V字になっていればマシなほうです。高名な医学者が国会の委員会で発言しているときもV字で、すぐに鼻孔が見えていました。正しく着けないと、安全には貢献しません。他方、「安心」は厄介です。傍に空腹の猛獣がいても、その存在を知らないと安心していられるように、安心は心の状態であり、事実とは無関係です。政治家も行政もマスコミも、安心と安全をセットで使用しますが、「安心」は極めて主観的である一方、「安全」にはある程度の客観性が求められます。
今回の事件はエア・ドゥ側には想定範囲だったはずです。国土交通省の見解を承知した上で、安全性重視というより、批判を避けることを優先したとしか思えません。私はこのような状況でマスクの着用を要請されたらすると思います。それは、必要性を認めているからではなく、見知らぬ人と議論することがバカバカしいからです。T氏とは面識もなく、政治信条も知りませんが、政治家としてマスク強制の無意味さを訴えようとしたのだと思います。その行動が自分の政治家としての立場を失うことも覚悟していたはずです。落選のリスクを承知でこのような行動を取ることは、支持率が下がらないことや次の選挙を最優先に考えている政治家より立派です。同調圧力と正面からは戦わない私も、彼を批判する気にはなれません。