新庄徳洲会病院

menu

<

掲載日付:2023.05.17

Vol.264 LGBT法案は誰のためのもの?

 「イミテーション・ゲーム」は、第二次大戦中にドイツ軍の暗号解読に取り組み、コンピューターの基礎を築いた天才数学者アラン・チューリングを描いた米国映画ですが、彼の同性愛者としての苦悩も描かれています。舞台となった英国では、1967年までは男性の同性愛は犯罪で、彼はホルモン注射を定期的に受ける保護観察処分になり、2年後に亡くなります。今でも法律や宗教で禁じられている地域は少なくありませんが、歴史的に日本は非常に寛容で、先進的とも言えます。G7諸国で同性婚が唯一認められていないのは、このような背景も考慮すべきです。性的少数者の権利を守るためにLGBT法案を、G7サミットまでに成立させようとする動きがあります。性的指向や性同一性に関する国民の理解を増進することが目的とされていますが、特定の政治勢力や活動家の利益と引き換えに、女性や小児を性被害の危険にさらすのではと危惧します。

 特に「性自認」には慎重を期すべきです。性同一性障害の診断や適合手術の有無に関わらず、誰もがいつでも何度でも表明・変更できる性自認は、心の問題が絡んでくるので、法律で取り扱いにくい問題です。先日行われた性的少数者4団体の記者会見では、これまで差別されたことはなく、「女性だと言い張る男性を女性として認め、女子トイレが使えるように解釈される可能性が高い。このような法律は不要だ」と強調しています。また、LGBT活動家は当事者の代表ではなく、我々の声も報道してほしいと訴えています。法案成立を目指す国会議員は、これは理念法であり、トランスジェンダー女性やそれを装った男が女性専用スペースを利用するとは考えにくいと反論していますが、東京の銭湯ではすでに警察案件が年間数十件も発生しています。欧米では、性被害だけでなく、トイレや更衣室に入ってきたトランスジェンダー女性を訴えた側が差別として職を失った事例も報告されており、行き過ぎた制度を引き戻す動きも起きています。

 性的指向のために「生きづらさ」を感じることはあるでしょうが、そのような若者が、安易に性自認の問題として、男性器や乳房の切除などの取り返しのつかない治療を受けることや、悩みが深刻化して自殺することを防ぐことが先決ではないでしょうか。この法案が成立すると、国は基本方針を策定し、自治体は地域協議会を設置して、啓発活動を実施します。そこには支援団体・学識経験者などが選任され、小中学校へ講師を派遣しそこで用いるDVDなどの資料を作成します。当然そこには様々の「LGBT利権」が生じます。G7サミット前の成立を目指すのは、予算編成との兼ね合いがあるというのはゲスの勘ぐりではないような気がします。

 先日行われた推進派のデモには、米国大使までが参加して日本は法整備を進めるべきだと発言しています。自国にないものを他国に要求するのは内政干渉と思いますが、それをありがたがる日本の国会議員もどうかしています。日本国憲法第14条には、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種・信条・性別・社会的身分又は門地により、政治的・経済的又は社会的関係において、差別されない」とあります。これ以上に明確な法律が必要であるとは思えません。医療現場では親族でなくても、患者が希望すれば病状を説明します。多目的や女性用のトイレは、増やすべきですが、ジェンダーレストイレの必要性は理解できません。どうしてもというのなら国会に作ればよいのです。性指向自体が多様であるため、性的少数者が抱えている問題は複雑を極めており、私を含め多くの人は理解できていないはずです。それを地道に拾い上げもせず、拙速にこの法案を成立させようとするのは無謀です。心の問題には、曖昧さを残すほうが住みやすい社会になると思います。ゲイであることを公表している元国会議員によると、昨年に性指向が原因となった殺人事件の被害者は米国で51人、EU諸国で14人もいるそうですが、日本にはいません。


menu close

スマートフォン用メニュー