新庄徳洲会病院

menu

<

掲載日付:2020.02.29

Voi.177 マスクがなくなるくらいで騒ぐな!

 新型コロナウイルスによる肺炎が大問題となっています。未知の病原体なので感染力や毒性がはっきりしません。これまでに分かっている特徴は、感染力はかなり強いことと潜伏期が長いことです。武漢などの初期に起こった地域ほど毒性が強く、時間的空間的に広がるにつれて弱まっているようですが予断は禁物です。いつ身近に患者が発生してもおかしくない状況と考えて、一人ひとりにできることを考えて実践しましょう。

 最も大事なことは手洗いです。ウイルスや細菌は手指を介して侵入することが多く、不特定多数の人が触れるものは危険です。医療者は消毒用のアルコールを身につけて、患者さんや器具に触れる度に手につけてこすり合わせるよう心がけています。中国のように手指洗浄用のアルコールが入手困難になった場合は、こまめに石鹸で手を洗うしかありません。手洗い後の拭き取りはペーパータオルが最善です。我が家では、洗面所・トイレ・台所にはペーパータオルを置いています。私は病院のトイレで手を洗った後は、水を流したままにして、まずペーパータオルで手を拭き、ペーパータオルを持った手で蛇口を締め、その手で直接ドアノブに触れないようにしてドアを開けてからペーパータオルを捨てます。電気を消すときは、肘を曲げて関節でスイッチを押すようにしています。その他の場面でもできるだけ手のひら側では触れないようにしています。

 自分の手の汚染を最小限にした上で、更に気をつけるのは、手で自分の顔を触らないことです。ウイルスは、口や鼻はもちろん、眼からも侵入することが知られています。マスクの効用の一つは自分の口や鼻に触れる機会を減らすことですが、マスクの有無に関わらす実践すべきです。

 うがいは効果があると考えられています。水を使って15秒間のうがいを2回すると風邪を引く確率が40%程度下がるという研究報告があります。消毒薬入りのうがい薬を使うメリットはありません。鼻の洗浄もよいかもしれません。私は、市販の鼻洗浄ボトルで1年以上実践しています。高価な専用の洗浄液は不要で、ぬるま湯100mlに対して食塩1グラムの割合で溶かして使用すれば、痛みもほとんどありません。片方の鼻から150ml入れると反対の鼻または口から出てきます。これを反対側からも行います。私は入浴時にしていますが、洗面所でも可能です。

 最後にマスクについて考えます。病院で使用するマスクも不足し、当院でもこのままの状態が続けば、4月にはなくなりそうです。マスクをつけることで、咳やくしゃみで自分の唾液を飛ばさないという効果はありますが、ウイルスを通さない特殊なマスクは一般には手に入りません。咳が出るときはつけるべきですが、乾燥を防ぐことや自分の鼻や口に触れにくくすること以外には、マスクの効果は限定的です。マスクがなくなったら、キッチンペーパーと輪ゴムで代用することで日常レベルでの効果は十分です。マスクなしで咳をする時は、肘を曲げて腕を上げ、鼻と口を塞ぐようにします(これをドラキュラのポーズと言います)。マスクを買うために長時間行列に並んだり、不当に高価なものを買うのは時間とお金の無駄です。栄養と休養を十分にとって、病気に負けない身体を作るほうが大事です。調子が悪いときは、学校も仕事も休むしかありません。病院や高齢者施設にお見舞いに行くのは厳禁です。調子が悪くないのに、心配だからと病院を受診するのは、医療資源の無駄遣いであり、感染の機会を増やすだけです。


menu close

スマートフォン用メニュー