新庄徳洲会病院

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掲載日付:2025.10.09

Vol.301 人口減少と労働力不足、移民は最良の対策なのか

 我が国の人口は2008年をピークに減少し始め、これに歯止めをかけることが重要と言われています。経済が豊かになり平和が続くと、出生数が減少するため人口が減少します。1947〜49年には年間約270万人が生まれ団塊の世代と呼ばれていますが、その後は減少し、私が生まれた1958年には150万人、昨年は70万人を切りました。人口の減少により労働力が不足して、経済が縮小する対策として、出生数増加を目的に「こども家庭庁」なるものが創設されましたが、その存在意義は疑問で、税金の無駄遣いとしか思えません。実は、私が高校生だった1970年代前半には、このままでは世界の人口が爆発するから、我が国でも「産児制限を」という言葉が普通に用いられていました。近年の人口減少はそれが実を結んだとも言えます。

 人口減少によって国民総生産(GDP)は減少しますが、一人あたりのGDPは増加することもあり、「人口減少=貧困」とは言えません。最大の欠点は戦争(特に地上戦)で弱いことです。人口1億人の国が100万人の国を侵略することは可能ですが、逆は不可能です。一方で、最大の長所は食料不足が起こりにくいことです。確かに人口が減少すると労働力は不足しますが、経済規模も縮小するので、急激な変化さえ起こらなければ対策は取れるはずです。先の戦争では、若い男性を中心に300万人以上が亡くなりましたが、団塊の世代が生じたのはその影響です。貧しい地域では子供は生産力そのものであり、乳幼児死亡率が高いと多死を補うために多産になります。中国や韓国の合計特殊出生率は我が国よりも低く、アフリカ諸国はずっと高いのです。平和で豊かな社会で、出生数を維持することは困難で、男女平等が当たり前になり、出産可能な女性にも社会参加が求められる現代では不可能と言えます。我が国が貧しくなると、いずれ出生数は増えるでしょうが、そうならないである程度維持する道を考えればよいのです。

 労働力不足の対策として、移民は最も即効性があり、労働力が安価であることは雇用側には魅力があります。第二次大戦後の高度成長期に、当時の西ドイツは単純労働の人材をトルコなどからの移民に求めました。短期的には成果がありましたが、長期的には深刻な移民問題を招きました。当時の日本も労働力不足になりましたが、移民に門戸を解放せず(できず?)、そのかわりに肉体労働者の賃金を上げました。そのため我が国には移民問題はなく、20世紀後半には「一億総中流」という前代未聞の社会を作り出しました。ところが、グローバル化という巨大な波に乗って、「総中流ではなく努力するものが報われる社会」というスローガンを掲げた政府は、移民ではなく「技能実習生」という名前を使って実質的に移民政策を進めました。近年急激に増加した移民が社会問題化し、ようやく国政選挙の争点ともなってきました。

 福祉先進国として有名な北欧のスウェーデンは国土面積は日本の約1.2倍ですが、人口は約1/12で東京都民より少ないのです。国土に占める森林面積は両国とも60%代後半で、居住に適した面積はほぼ同等と考えられ、体感的な人口密度は1/15程度でしょう。そのような人口の少ない国でも、豊かな国造りは可能でした。ところが、欧州の中でも特に移民に寛容な政策を取ってきたため、アフリカや中東からの移民が急増するとともに治安は悪化し、性被害に遭う女性の数が人口比で世界トップクラスになりました。他の欧州諸国でも、治安の悪化や文化の破壊に危機感が起こり、国民的な運動になっていますが、我が国の政治家・官僚・経済界は、相変わらず前のめりになっています。外務省から発表された「ホームタウン構想」もその一つです。親族が移民ビジネスに深く関わっている有力政治家の名前も上がっています。移民以外に労働力不足を補う方法はないのでしょうか。専門家ではありませんが、私なりに考えることを次回にお話しします。


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