新庄徳洲会病院

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掲載日付:2021.04.12

Vol.213 村井知事、仙台では肺が真っ白な患者が入院できないのですか?

 先日、病棟回診をしていると患者さんのテレビから、「肺が真っ白な患者が入院できない」という宮城県知事の声が聞こえてきました。調べてみると、4月2日に行われた県内の市町村長との会議で、仙台市を「まん延防止等重点措置」の対象にしたことを報告した後の記者の質問に答えて、「肺が真っ白で病院に入るべき人が、ホテルにいなければならない状況だ。」というものでした。ところが4月3日に行われた記者会見では、「仙台市青葉区の宿泊施設ではレントゲンで肺をみると白くなっているなど、本来は医療機関に入院すべき人が入院できずに療養していて…」と表現が穏やかになっています。ニュース映像でもレントゲンは確認できますが、遠目に見ると肺炎はありそうですが、「真っ白な肺」とは程遠いものです。前日の表現が不適切であることを指摘されて変更したのでしょうか。

 新型コロナウイルスに感染して肺が真っ白になっているということは、ひどい肺炎を起こしているので、酸素吸入などの呼吸管理が必須です。そのような患者が入院できずに、ホテルに待機しないといけないほど宮城県の医療体制は崩壊しているのでしょうか。4月1日現在の宮城県の新型コロナ用の病床数は270床で、入院患者、176人で占有率は65.2%です。重症患者用の病床数は24床で重傷者は9人です(ただし、同時期の厚労省の発表では病床占有率は35.8%、重症患者の占有率は15.4%です)。仙台市だけ重症患者が多い可能性はあり、実際に患者が受け入れ先がなくて100キロ以上離れた気仙沼市に搬送された例も報道されています。肺が真っ白の患者を受け入れられない状況が大都市仙台で起こっているということは、医療体制の問題で、その責任者は県知事にあるのです。実際の医療体制をコントロールしているのは県であり、その責任者は知事なのです。

 重症者が多くなれば、地域を超えた連携をすればよいのです。本当に県内で受け入れられないのであれば隣接する山形市に搬送することもできるはずです。仙台市と山形市は全国の県庁所在地で唯一隣接しており、病院間の移動は高速道路を救急車でサイレンを鳴らせば1時間以内で可能です。他県の重篤な患者を受け入れない制約が新型コロナにあるのであれば、それこそ知事の権限で何とかするべきです。4月1日現在の山形市にあるコロナ病床の占有率は県立中央病院が60%、山形大学付属病院は7%程度で受け入れ不能ということはありえません。

 私は田舎のヤブ医者ですが、仙台の医者が肺が真っ白の患者をホテルに待機させることはありえないと思います。医療環境は山形市よりも仙台市のほうが整っているはずです。このような誇張をして、新型コロナの脅威を煽ることで自分の政治責任を回避しようとしているのではないかというのはゲスの勘ぐりでしょうか。多くの政治家は、新型コロナの深刻さを誇張し、どんな政策を行ってもコントロールできないと言い訳をしているように思います(実際、独裁国家以外は政策と感染のコントロールはあまり関係ないように思いますが…)。このような政治家やそれに迎合する専門家と、視聴率を稼ぐために危険を煽る大手マスコミにより、多くの国民は過剰に恐れ、緊急事態宣言の解除に反対したり再発動を求めているように思えて仕方ありません。二類感染症を外すと病床の逼迫は解消されるはずですが、それが話題にもならないのも同じ理由です。ワクチンが普及して90%の効果を示しても、米国の人口あたりの感染者数は我が国よりまだ多いはずです。感染症が消滅するまでこの状態を続けるとすると、未来永劫続くことになります。夏目漱石の弟子でもある明治の物理学者寺田寅彦の言葉と言われている「正しく恐れる」という姿勢はどこに行ってしまったのでしょうか。


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