新庄徳洲会病院

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掲載日付:2021.07.14

Vol.222 もっと解剖を

 ワクチン接種後の死亡が多いという指摘がありますが、他方でそれはワクチンとは無関係だという意見もあり、どちらも一理はあると思います。今のところ効果はあるが、急性期の副反応はやや強めで、長期の副反応は今のところ何とも言えないというのが私の感想です。7月7日に厚労省が、新型コロナワクチン接種後に死亡した556件を発表しましたが、今回初めて「因果関係あり」という事例がありました。問題となったのは80歳の女性で、2回目の接種7日後に「血小板減少症」と「くも膜下出血」で死亡しています。「関連なし」は7例で、残る548例は「情報不足等によりワクチンとの因果関係が評価できないもの」に分類されています。この圧倒的多数を評価できないままで終わらせず後世に活かすために、積極的に解剖した方がよいと思います。

 死後の解剖には、医療が行う解剖と警察が行う解剖があります。前者は病理解剖と言い、日本病理学会のホームページではその目的を、「病気で亡くなった患者の臓器・組織・細胞を直接観察して詳しく医学的に検討して、きわめて精度の高い病理診断をすることで、死因を正しく理解し、治療の適切性についても検討すること」と述べています。私が医者になった35年以上前は、患者さんが亡くなったときにほとんど全例で遺族に病理解剖をお願いしていました。解剖の同意を取ることが臨床医として最後にできることだと恩師から指導されましたが、私はほとんど取れない出来の悪い研修医でした。当時病理解剖は、年間約4万件行われていましたが、最近では1万件ほどに減少しています。これは、CTなどの画像診断が進歩し、解剖しなくてもわかる事が増えたからだと思いますが、個人的には解剖なんてしなければよかったという事例はただの一度もなく、今でも解剖によって判明することは少なくないと信じています。一方の警察が関与する解剖は、変死体などの死因究明のために行われるもので、犯罪の可能性があり裁判所の許可のもとに行われる司法解剖と、犯罪性はないが死因を究明する目的で遺族の承諾のもとに行われる承諾解剖があります。これらは病理解剖と逆に増加傾向で、令和2年度は全国で1.9万件以上が主に大学の法医学教室で行われています。

 解剖をしても死因がよくわからないこともあるので、ワクチン後に死亡した人を解剖しても、その影響が判定できないことが多いような気がします。しかし、多くの症例を蓄積することで、その中に何らかの共通点が見つかり、将来新たな事実が判明する可能性も否定できません。特に、それまで健康だった人がワクチン後に急に亡くなった事例は、ある程度の強制力を持ってでも解剖したほうがよいと思います。「血小板減少」や「クモ膜下出血」や「脳出血」が関係している事例にはなおさら重要です。医療従事者も数人が脳血管障害でワクチン後に死亡していますが、いずれも解剖していないようです。残念なことです。

 今回のワクチン接種は歴史上初めての壮大な人体実験です。だからこそ感染や重症化の予防効果の検証とともに、どれくらいの副反応があるかを可能な限り正確に評価する必要があります。すぐに結論は出ないでしょうが、データの蓄積に励むべきです。犯罪性はないので司法解剖の対象にならず、遺族の同意が必要になります。突然家族を失った遺族がこれ以上死者を苦しめたくないと解剖を拒否する気持は理解できますが、尊い生命を少しでも今後に役立てるように解剖をすべきではないでしょうか。ワクチン接種を受けた私は、実験材料の一人(一匹?)だと認識しており、材料は材料として最後まで役割を果たすのが務めという覚悟は、医療従事者の端くれとして持っています。ある程度の強制力を持って解剖に踏み切るためには、新たな法整備も必要になりますが、それをしてでも積極的に行う価値はあると考えます。


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