新庄徳洲会病院

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掲載日付:2020.05.27

Vol.186 専門家も間違ってよいが・・・

 厚生労働省が5月14日に公表した「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」で、症状が出た患者を発症日で見ると、図のようにピークが3月末から4月初めであるとわかります。実行再生産数もこの時期に1を下回っています。この事実から、感染が広まったピークはその約5日前、つまり3月下旬であることは間違いありません。ということは、4月14日の全国への緊急事態宣言の拡大はもちろん、7日の7都府県での宣言の時点では、感染がすでに峠を越えていたことになります。経済活動に多大な影響をもたらした緊急事態宣言が、感染の沈静化に果たした役割はかなり限定的と考えてよさそうです。緊急事態宣言自体はやむを得なかったかも知れませんが、それを5月7日まで継続しただけでなく、更に延長したことは理解できません。この時の説明も、決してわかりやすいものではなかったばかりでなく、「効果は期待はずれであった」と発言した専門家さえいました。

 専門家会議が盛んに口にしていた「クラスター対策」への評価も知りたいところです。初期にはある程度効果があったかもしれませんが、無症状者からも感染が起こることがわかり、実際に感染源不明者が増えた時点でも、このやり方に拘ったのはなぜでしょうか。「提言」にはいまだにクラスター対策の継続が謳われていますが、もしかして、クラスター対策がうまく行かなかったときの、次の方策がなかったのでしょうか。

 専門家会議の人たちが、強い使命感に駆られて不眠不休で働いていたことには頭が下がりますが、この2ヶ月彼らが訴えていたことは「接触機会を減らす」と「禁3密」だけだった気がします。「ステイホーム」を愚直に守る国民性によりそれはかなり実行されたと思いますが、経済的影響は深刻なものになりました。せめて、経済活動を再開する準備として生活様式の変化を具体的に訴えることはできなかったのでしょうか。人→物→人感染の重要性を強調し、自分の口や鼻に触らない生活習慣は言及されていませんでした。屋形船は槍玉に挙げられていましたが、もっともっと危険な環境はなかったのでしょうか。性風俗を含めた接客業から感染は報じにくいかもしれませんが、かなり重要な感染源であったはずです。専門家会議は政府への助言を行うのであって、一体化する必要はありません。政府の方針に異を唱えることも必要だと思います。

 専門家も間違いは犯します。それ自体は恥ずべきことではありません。大事なことは、透明性を保持し情報を隠さずに開示することです。間違いも含めて、経過を説明し、分析して改善する姿勢に乏しかったのでないでしょうか。専門家が困ったときは、困っていることを表明するほうが、国民は安心し、信頼も得られやすくなります。国民はバカだから何も知らなくてもよいというのは独裁国家の姿勢です。たぶん、国民は話せば分かると思います。


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