新庄徳洲会病院

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掲載日付:2022.10.18

Vol.254 マスクをする自由としない自由

 先月、3年ぶりに開催されたNHK全国学校音楽コンクールの地区大会がニュースで紹介されていましたが、全員がマスクを付けて合唱している姿に驚きました。参加規定では、前後左右に2メートルの間隔を取り、不織布マスクを付けることとあります。マスクをしても上手く歌えるのは大したものですが、合唱中にマスクに触れている生徒が少なくありませんでした。ずれたのを戻しているのが多数でしたが、呼吸のための隙間を作っているようにみえる生徒もいました。

 NHKの広報局は、文科省のガイドラインに沿って、全国コンクールでもマスク着用を指示すると公表しました。文科省の外局である文化庁が出した「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」には、「合唱をする際には、マスクを原則着用する」とあり、児童・生徒ら同士の間隔は、マスクをしていても最低1メートル、できるだけ2メートル開けるように指示しています。今回のNHKの方針に対して文化庁は、「マスクは推奨していますが、各地域の感染レベルに応じて一定の距離を取っていれば、必ずして下さいとは通知していません。」との見解を示し、マスク着用をガイドラインのせいにされるのは困るとさえ述べています。本選ではNHKのアナウンサーとゲスト歌手と審査員以外の生徒と教師は律儀にマスクを付け、合唱中に直している生徒も少なくありませんでした。この光景を異常と思わない感性は異常です。一般のコンサートでマスクを付けて歌っている演者はいないはずです。

 要するに、NHKは、感染が広がっても生徒が酸素欠乏で救急搬送されても、ガイドラインに沿ってやったので我々には責任はない、また、文化庁も、原則を示しただけでどのように運用するかは現場の判断であり、ガイドライン自体には問題ないと言うでしょう。結局は誰も責任を取りたくないのです。どのような事態になっても、それは自分以外の誰かや何かの責任だという、責任回避が最優先される社会構造なのです。これは合唱だけではありません。日本剣道連盟主催の試合では、不織布マスクの上にフェイスシールドを付けて、その上に面をつけることが義務付けられています。友人の剣道家によると、普段の稽古中からそうしているそうです。その結果、歌唱用や剣道用のマスクが開発され、マスコミはそのことを称えています。水泳用のマスクに至っては、笑えない冗談としか思えません。

 コロナ騒動初期にマスクの在庫が逼迫した時、そんなに慌てるなという趣旨のコラムを書きましたが、マスクの感染予防効果が限定的であるという私の考えは今も変わりません。確かに昨年米国の大学のグループがバングラデシュの農村部で行った大規模調査では、マスクの着用を推奨した地域では新型コロナによると思われる症状が11.6%低くなったという結果が出され、その有用性を支持しています。一方で最近の韓国からの論文では、多くの国からの報告を集積したメタアナリシスで、新型コロナを含む呼吸器感染のウイルス疾患に対しては、N-95という特殊な医療用マスクは予防効果は証明されましたが、一般の不織布マスクでは統計学的に意味のある差は認められませんでした。オミクロン変異した新型コロナの死亡率・重症率の低さを考えると、マスクの優先順位はかなり低く、特にそれを若者に強制するのは明らかに間違っています。そんな中で、福岡県の高校生が、「マスクを自由にする会」というものを立ち上げました。以下の2点-①屋内外問わず、マスクの着用は任意であり強制ではないと公言して頂く、②屋内外問わず、マスクの着脱を、他者に強要してはならないと公言して頂く-を、内閣総理大臣と厚生労働大臣に請願するため、署名10000人の目標を達成しました。未来ある若者にエールを贈りたくて私も署名しました。ネットで簡単にできます。


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