Vol.314 一気に社会復帰
周囲の反対を押し切り5月10日に退院しました。主治医であるH先生はもう1週間くらい入院していたらと、妻は1か月くらいは仕事を休んだらと言いましたが、退院翌日の11日からは外来・病棟・手術助手としてほぼ元の生活に戻りました。自分では連休明けの7日からと考えていたので、少し遅いくらいでしたが、連日の理学療法と嚥下訓練に加えて、朝夕の散歩や体操などの自主トレがあり、以前よりもハードな毎日となりました。
徐々に身体機能は回復してきましたが、病前と比べてしまうので楽観できません。相変わらず水はむせやすく、また、一度にたくさん口に入れてろくに噛まずに呑み込む早食いの習慣が染み付いているので、少なめに口に含み一口30回の咀嚼を目標にして、ゆっくり食べるように口に入れるたびに箸を置くようにも気をつけていますが、思うようには行きません。嚥下がうまくできないせいで喉の奥に唾液が溜まりやすいせいか、咳や咳払いをすることが多く、声帯も荒れ気味で声がかすれたり、くしゃみや咳が間延びして困ります。空気が一緒に食道に入るので、呑み込むたびにカエルが鳴くようで、当初はトノサマガエルでしたが、現在はアマガエル程度になっています。今後は、食道の入口を風船付きのカテーテルで広げる治療も検討されています。
感覚障害については新たな発見がありました。私の梗塞は延髄の右外側に起こっているので、顔面は右に、それ以下は左に、熱い冷たいと痛みがわからないのが普通です。最初はそんな気がしていましたが、新庄に戻り入浴して、湯をかけると頭と顔の感覚障害が左にあることがはっきりしてきました。調べてみると、延髄外側症候群では、典型的な感覚障害が起こるのは半分以下で、微妙にいくつかのパターンに分かれるようです。もう一つ、発症日の朝に眼の奥に感じた鈍痛は、今も続いていますが、眼窩痛と呼ばれるものの可能性があるということもわかりました。手足の異常感覚はむしろ悪化し、熱い冷たいはわからないのに左手はいつも冷たく感じて、足はしびれが切れた状態が続いています。感覚障害のためにヤケドとケガには注意が必要です。
社会復帰をして感じたことは、まず体力の衰えです。体重は6Kg減少しましたが、それ以上に疲れやすくなりました。散歩するのは辛くないのですが、その後に疲労感が押し寄せてきます。仕事で歩いていると身体がフワフワするのに、足取りは重くなりがちです。体力とは関係ないですが、キーボード操作が下手になり、ミスタイプが多くなり、文章を書くのに時間もかかるようになりました。なぜかパソコンやタブレットの指紋認証もできないことが増えました。短期記憶は非常に怪しくなり、「今何をしようと思っていたのか」という現象が数秒で起こることが珍しくなくなりました。逆に良くなったのは、生活習慣が健全になったことです。嚥下することに問題が生じたことで、食べるものに制限ができ、特に菓子類に手を出すことが減りました。アルコールはもともと付き合い程度でしたが、発病後1か月を経過しても全く手を出していません。朝夕の散歩の影響もあり、眠りが深くなり、嫌な夢を見ずに6時間程度は眠れるようになり、夜間頻尿に悩まされることも減りました。動画や本で調べていろいろな運動を試していますが、これは良さそうと始めた体操のおかげか、肩こりは半分以下になり、腰痛も2割ほど減ったようです。災い転じて福となればよいですが、いくつかの後遺症は生涯続き、完全になくなることはないでしょう。私の一番身近にある自然は、自分の肉体なので、現状を受け入れて、肉体に命令するのではなく、身体の声を聞けるようになりたいです。そのためには、高校時代に恩師のN先生から言われた「もっと力を抜きなさい」を今度こそ実践できればいいですね。過去に起こった事実を変えることはできませんが、それをこれからに活かすことはできると信じています。