新庄徳洲会病院

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掲載日付:2023.02.22

Vol.259 死亡者への一時金支給から考える

 2月10日に、厚生労働省の分科会は、新型コロナワクチンの接種後に死亡した59~89歳の男女10人について、「因果関係が否定できない」として死亡一時金などの支給を決定しました。死亡例に国の救済制度適用が認められたのは、昨年7月から累計30人になります。接種時期が資料からはわかりませんが、昨年7月の初報告例が死後1年以上経過していたはずなので、今回の報告例もかなり以前のものと考えられます。昨年12月時点でのワクチン接種後の死亡例は1950件を超えているので、救済件数はさらに増加することが予想されます。ただ、「因果関係が否定できない」というのは、救済のための分類であり、副反応の検討部会では、ほとんどすべての死亡例が「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないもの」に分類されています。つまり、因果関係は評価できないが、救済のために認めるということです。

 You Tuberの野中しんすけ氏が、他のワクチン救済制度の結果を調べていますが、これが非常に興味深いのです。厚生労働省はホームページで、「予防接種健康被害救済制度の認定者数」を発表しています。これによると、1977年2月から2021年12月までの約45年間で、死亡一時金が支払われたのは、すべての予防接種で151件です。最も多いのは天然痘の42件で、ついでインフルエンザ25件、三種混合20件、風疹14件、経口ポリオ12件、日本脳炎11件と続きます。ワクチン全体では、年平均3.4件、新型コロナに似た感染症と言えるインフルエンザは0.6件です。新型コロナは約半年で30件も認定されました。単純に換算すると、すべてのワクチンの十数倍、インフルエンザの100倍に相当しますが、これはどう考えたらよいのでしょう。

 新型コロナワクチンは、安全だが多くの国民が接種したためにこれほどの被害が出たということでしょうか。それとも新型コロナという病気が社会に与えた影響が大きいので、厳密な因果関係の検証よりも被害の救済を優先したから増えたということでしょうか。常識的には、これまでの予防接種よりもかなり危険と考えるのが自然ではないでしょうか。百歩譲って、ワクチンには必ずリスクはあるのだからこの程度の被害は受容すべきであると言うのであればまだわかりますが、そのようなコメントは政府からも専門家からもありません。そもそもこれだけのリスクを許容しないといけないほど新型コロナは恐ろしい病気だったのでしょうか。OECD38カ国中、我が国の人口あたりの死亡者は今でも37番目です。社会生活や経済活動がこれほど制限されなければならないほどの感染症だったとは思えません。このような政策をとったからこの程度の被害で済んだという考え方を否定することは非常に難しいとは思いますが、釈然としません。

 元来、我が国はワクチンに対する警戒心が強い国で、麻疹(はしか)などの有用なワクチンを受ける割合が少ない国でしたが、今回は国を挙げて接種を進めています。また、モデルナ社が日本国内にワクチンの生産拠点を整備する計画も進んでおり、今後はコロナ以外のウイルスに対するmRNAワクチンの製造を計画しているはずです。新型コロナワクチンに対しては、すでに2兆4000億円が国費から外国企業に支払われ、しかもその半分以上が未使用の状態です。ワクチン行政は、効果が危険性を上回っているかどうかを最重要視しなければなりません。ある免疫学の教科書には、よいワクチンの条件として以下のような条件が挙げられています。①安全性が高い(ワクチン自体で病気になったり死ぬことがない)こと、②有効である(発病を防ぐ)こと、③持続性がある(効果が数年間続く)こと、④中和抗体を誘導すること、⑤実用的である(低価格、生物学的に安定、簡単に投与できる、副作用が少ない)こと。果たして今回のワクチンは、この条件をどれだけ満たしているでしょうか。


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