Vol.238 安心してコロナに感染することができる社会を
昨年11月初旬に職場の朝礼で私は以下のような話をしました。「新型コロナの第6波は必ず来る。早ければ11月末頃かもしれない。理想的な変異は、感染力が非常に強くて、毒性が非常に弱いもので、そうなったときにこの感染症は普通の風邪になる。」オミクロン変異はそれに近いものと思われ、死亡率は0.1%を下回ったようです。インフルエンザは毎年1000万人程度が感染し、関連死亡者数は1万人と言われ、死亡率はおよそ0.1%程度です。新型コロナの毒性は少なくともインフルエンザ並みになったと考えてよいでしょう。にもかかわらず、まん延防止措置が各地に適用され、山形県もその対象となりました。確かに、陽性者は過去最高を更新し、200人を超える日もありますが、入院患者数は60〜80人台で推移しているので、軽症以下が多く、入院期間も長くないということです。重症者は0のままです。
まん延防止措置に効果があると思っている人などいないと思っていたのですが、ある世論調査では、その発出時期について「適切」と「遅すぎる」がほぼ同数を占め、計90%に達しました。私のように有害無益なので不要と考える人は10%もいないのです。最近の政治家は国民感情を異常なほど気にするので、内閣支持率が高止まりしている限り、首相は現状維持を目指すでしょう。目先の選挙につながらなくても、信念を貫く気骨ある政治家は絶滅したのでしょうか。
社会活動に支障をきたすため、濃厚接触者の行動制限期間が緩和されましたが、私は濃厚接触者の追跡も無症状者への検査も不要と考えます。軽症者は通常の風邪と同じように安静にし、よくならないときはかかりつけ医を受診し、その上で重症者に対して専門治療が受けられるようにすればよいのです。保健所はウイルスに関する疫学調査を行い、治療が円滑かなどを調べる本来の仕事をすべきです。濃厚接触者や軽症者が医療機関、特に大病院に集中することさえなければ、現行制度で医療が崩壊することなど想像できません。幸い今シーズンもインフルエンザは壊滅状態であり、いつも通りの行動を取ればよいのです。5類に落とせば医療費の患者負担が増えるという意見もありますが、我が国には高額医療費を手厚く保障する世界に類を見ない制度があり、民間の医療保険に入っていなくても、1ヶ月に10万円以上負担することはありません。自己負担を免除する特例措置も可能でしょうが、新型コロナがそれに値する病気とは思えません。
オミクロン株は、ワクチン接種の有無に関わらず、南アフリカでもヨーロッパでも沖縄でも1か月程度でピークを超えました。全国的にはあと半月程度でしょう。流行が遅れた山形は、2月下旬までかかるかもしれませんが、雪が一段落する頃には落ち着くでしょう。さらに変異が起こり、再上昇しても必ず収束します。ロシア風邪もスペイン風邪もSARSも収束しなかったウイルスによる急性呼吸器感染症はありません。これまで世界中でロックダウンや生活様式の変更や頻回な検査などの取り組みがなされてきましたが、波の大きさに差はあっても動きは同様でした。例外は中国くらいでしょう。ワクチンや抗ウイルス薬も決定打とはならず、結局は多くの人が感染して、集団免疫ができるまでこのような感染症は収まらないのだから、ウイルスと共存しながら被害を最小限にする道を行くしかないことを、私は再認識ました。新型コロナのリスクを過大評価し、同時に人間の能力も過信し、ウイルスには打ち勝つ手段があり、それを実行できないのは自分以外の誰かに責任があるという風潮ができ上がりました。2年間の推移を見ると、目指すのは、新型コロナに感染しない社会構造を創ることではなく、新型コロナに安心して感染することができる社会です。遠からず終わるので、多少のリスクは背負う覚悟を持って、時々は気を緩めてもいいから、共に歩もうと言うのがリーダーの役目だと思います。