新庄徳洲会病院

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掲載日付:2020.10.14

Vol.200 冬が来る前に考える

 新型コロナ騒ぎで世の中は様変わりしましたが、冬を迎えるに当たり、私達はどのように振る舞うのがよいか考えてみます。インフルエンザと新型コロナが同時に大流行することが懸念されていますが、その可能性は低いと思います。我が国ではインフルエンザが昨年秋から例年よりも早く流行し始め、患者数も多かったのですが、今年に入った途端に激減しました。これは、新型コロナに備えて各自が予防措置を取った影響が大きいと言われていますが、私達が新型コロナを本格的に意識し始めたのはその2ヶ月後であることを考えると、むしろ同じ感染経路をもつウイルス疾患が同時には流行しない現象(ウイルス干渉)が起こったのではないかと考えます。それを裏付けるように、南半球でのこの冬(北半球の夏)のインフルエンザや、我が国での夏カゼ(ヘルパンギーナや手足口病など)は、流行しませんでした。

 感染予防対策はいつも通りです。こまめに手を洗い、外出後にはうがいをしたほうがよいでしょう。うがいはぬるま湯で十分で、イソジンを使用するメリットはありません。私は、仕事から帰ると手洗い・うがいの後に鼻洗浄をして、そのまま入浴します。マスクはウイルスへの暴露を防ぐ目的では、密集しているところだけで十分で、人気のない屋外では不要です。ただ、鼻と喉の乾燥を防ぎ、自分の手が鼻と口に触れる機会を減らす効果はかなりあるように思います。自分が咳をするときは、飛沫を減らす利点はありますが、よく咳が出るときには出歩かずに自宅で休むことです。我々が最も改めるべきは、体調が悪いのに無理をして学校や仕事に行くことを美徳とする意識です。インフルエンザワクチンの効果は限定的ですが、副作用は非常に少ないので受けたほうがよいでしょう。新型コロナワクチンはこの冬には間に合いそうにありませんが、副作用や効果がわからないうちは焦って受ける必要はないと思います。

 新型コロナの感染源として最も多いのは家族内感染です。これは接触の機会が多く、距離も近いことからやむを得ないと思います。高齢者と同居している場合は、どの程度自立しているかにもよりますが、発熱などの体調不良がある人は接触を極力避けるようにすべきです。ただ、特に高齢者は人と距離を取ると生きていけないこともあります。また、精神的にも肉体的にも機能が衰えることも軽視できません。最終的には自らの責任で優先順位を付けるしかありません。

 体調が悪いときは、眠らなくても横になるのが最良です。無理に栄養を摂る必要はありませんが、水分は多めに取りましょう。発熱することで生体がウイルスを排除しやすくなるので、少し熱が出たからといってすぐに解熱剤は使用しないほうがよいです。熱が辛いときには市販薬のアセトアミノフェンを飲んでみて、それでも高熱が続いたり、これまでにないつらい症状があるときには医療機関を受診しましょう。その際には夜間の救急受診はできるだけ避け、かかりつけの医療機関などに連絡して予約を取りましょう。今後そのような体制が整備され発表されるはずです。発熱外来では新型コロナのPCR検査や抗原検査を受けることが多いでしょうが、インフルエンザ検査は医療者への感染のリスクがあるので行わない医療機関もあります。検査の結果により中等症以上の患者は指定医療機関に入院しますが、軽症以下は自宅待機になるかもしれません。

 心配だからという理由だけで医療機関に来る人が多くなると医療崩壊が起こります。我々は病気より患者を診ろと教えられました。呼吸困難になっているのに自宅待機とは言いませんが、大事なのは病状であり、病名ではありません。医療者のために花火を上げたり拍手をするよりも、このようなことを理解して行動する人が増えることを望みます。


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