新庄徳洲会病院

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掲載日付:2023.06.20

Vol.265 ええ加減にせい!

 私の年代の日本人男性の平均身長は約167cmで、身長順に並べると、極端に低い人と高い人は少数で、平均身長付近の人が最も多くなります。これをグラフ化すると釣り鐘のような形になり、155〜179cmの間に約95%の人が入ります。逆に言うと5%の人はこの中に入りません。オスとメスの遺伝子から新しい個体を作り出すことができるようになったのは、約10億年前からですが、これにより新たな生命を再生することができるようになり、その過程で進化が起こり、生物が発展しました。身長と同様に、オスとメスにも分布があり、極端にオスらしいオスやメスらしいメスもいれば、メスっぽいオスやオスっぽいメスもできましたが、そこには身長同様に理由はなく、ばらつきがあり多数派と少数派がいるだけです。

 多くの人は成熟して異性と性行為を行い子孫を残しますが、身長と同様に少数派は存在します。性の対象が同性であったり、両性であったりすることは大昔からありました。性行為を行わない個体や性行為を行っても子孫を残せない個体もありました。西洋と異なり、自然を受け入れる国民性の我々は、もともと少数派に対しても寛容な民族です。欧米諸国には深刻な差別の歴史があり、その反動が原動力となり、同性愛が許容され、同性婚が法制化され、さらには性は自らが選択する「性自認(ジェンダー・アイデンティティ)」という考えまで起こりました。LGBT運動が特別扱いされるのは、政治運動であるからではないでしょうか。その証拠に、電車の吊り革に手が届かない人や、玄関を通るときに身をかがめなければならない人は差別されているとして、低いところにつり革をつけたり、玄関を高くしたりという運動は起きていません。

 現代の日本で性的指向により差別されることはあるのでしょうか。就職の面接で、尊敬する人や愛読書を聞くこともNGとなった今、性指向を尋ねることなどありえません。個別の差別事例を示して検証し、必要なら法整備を行えばよいのです。そのような地味な作業は行わず、ガイドラインは今後作る予定だそうです。既に運用されている障害者差別解消法のガイドラインには、「障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の例」を35ページに渡って提示していることを考えると、数年間にわたって何もしてこなかった怠慢こそ責められるべきです。さらに、今回の修正過程で、「性自認」を「性同一性」に変えた与党案は、最終的に国民民主党の修正案で「ジェンダー・アイデンティティ」というカタカナ文字にして法制化されました。多くの国民が理解できないカタカナ語を法律の文章にするという知性の欠片もない国会議員には、明治維新に西洋から入ってきた概念を何とか日本語に変え、今では中国に逆輸入された「哲学、経済、法律、資本、文化」などの言葉を造った先人たちの爪の垢でも飲ませたい気持ちです。
 
 「差別禁止」という誰もが反対できないスローガンを掲げ、ある種の政治的な意図で進められているとしか思えないこの法案は、修正の必要もなく廃案にすべきでした。特に、四度にわたる部会ですべて反対多数だったにも関わらず、部会長一任として総務会や政調会を通し、国会で十分な議論をすると言いながら2時間しか行わず、党議拘束をかけて本会議に上程するという暴挙に出た自由民主党は、党名から「民主」という文字を即刻削除すべきです。また米国大使が、LGBT法案に関して、「日本は進化の過程にある」とコメントしていますが、このような日本人を見下す発言に対して、声を上げる政治家がいないことにも愕然とします。今の社会情勢は、国内外ともにかつてないほど多くの問題を抱えています。経済を活性化し、国防をどのようにするかを放置し、このようなどうでもよい法案に血道を上げ、その上日本の国柄を変えようとする政治家に鉄槌を下すのは選挙しかありません。なぜ我が国には健全な保守政党が育たないのでしょう。


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