新庄徳洲会病院

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掲載日付:2021.06.23

Vol.219 未成年へのワクチン接種

 コロナワクチンの接種が先進国の中で出遅れ、ペースも遅いと批判されていますが、唯一G7の中で昨年の超過死亡がマイナスで被害が最小である我が国が、先を争って獲得していれば、被害の大きい国を優先すべきだと批判されていたでしょう。また、接種ペースは諸外国に比べて遜色なく、1日100万件の目標もクリアできそうです。そんな中で、64歳以下への接種も一部の自治体で始まり、若者への接種を巡って賛成反対の意見が入り乱れています。私は、重篤な基礎疾患のない未成年はしばらく見合わせた方がよいと考えます。

 自国で不活化ワクチンを生産している中国は、3歳以上を対象に接種を始めました。米国は5月にファイザー製ワクチンの12〜15歳への接種が承認されましたが、44人の小児が接種後に死亡していることで評価も分かれています。英国でも子供の死亡が12人報告され、頻度は100万人に1人程度(この頻度は我が国での年間の学校での突然死に相当)であるものの、安全性が確認できるデータを待つべきであると、12〜17歳には接種しないことを決定しました。我が国の10代のPCR陽性者数は最も多い20代の1/3で、10歳未満は更にその半分以下です。死亡者はもちろん重症者も1人もいないので、予防接種をする意味は、他者への感染を防ぐことが主であると言えます。この年代は行動範囲が学校や家庭に限られており、大勢で酔っ払って騒ぐこともありません。まわりの大人がワクチンを接種するなどの対策をとればかなり防げると考えられます。

 健康人に対して行うワクチンは、病人に対して行う治療よりも高い安全性が求められますが、今回のワクチンの多くが、治験段階で短期の安全性確認に費やした時間が異常に短いものであることは間違いなく、長期の有害事象については全く未知と言えます。確かに、米国や英国やイタリアのように超過死亡が20%前後も増えた国では、リスクをじっくり評価する時間的余裕はないかもしれませんが、幸運にも被害の少ない我が国は慌てる必要はありません。

 私は医療従事者として2回目の接種も済ませました。注射部位の痛み以外の副反応は今のところありませんが、同僚の中には高熱や頭痛で寝込んだ人もいます。インフルエンザワクチンよりも副反応は明らかに多く、程度も強いと感じましたが、順天堂大学による新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査を見ても、医療従事者約2万人のうち2回目の接種後に37.5℃以上の発熱は40%弱、頭痛は50%以上に見られています。また、厚生労働省の6月9日現在の集計では、接種者約1300万人中、重篤な副反応が0.01%に、死亡は122人ですが、この数字だけでは安全性の結論は出せないと思います。122人の多くはワクチンと直接関係のない死亡という主張は当たっているかもしれませんが、死者を多くカウントするという点ではPCR検査陽性の死亡者をすべてコロナ死としていることも同じく批判されるべきです。

 今回のワクチンは、短期的にはインフルエンザワクチンより危険性が少し高い程度だと思いますが、長期的な影響は不明です。ワクチンは個人ではなく社会全体を守るのが目的なので、ゼロリスクは求めるべきではありませんが、感染した若者の被害が非常に少ないことを考えると、リスクは更に低くなければ受け入れられません。同居する高齢者が孫からの感染を恐れるのなら、ワクチンを接種するか、孫との接触を断てばよいのです。自分より孫の利益を優先させるのが大人の振る舞いではないでしょうか。ところで、長野冬季五輪が行われた1998年2月に、16人の幼稚園児から高校生がインフルエンザで死亡という日本経済新聞の記事を紹介したネット番組がありましたが、当時そんな事実を意識していた人がいたでしょうか。


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