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院長コラム

Vol.151 門前か門内か、それが問題だ??

 都会の大病院の前には十数店の調剤薬局が軒を連ねる光景が普通に見られます。これは約20年前から国が進めている医薬分業政策がもたらしたものです。医療機関が薬を安く仕入れて過剰に処方することで利ざやを稼ぐ「薬漬け医療」が医療費を高騰させる元凶と、院内処方を減らすために院外処方を優遇したのです。その結果、今では院外が七割を占めています。

 院外処方では、薬剤費に加えて技術料が上乗せされるため患者負担は平均で3倍に増大します。これにビジネスチャンスを見つけた人達が、大病院の目の前に門前薬局を次々と開業したため、調剤医療費は過去15年間で2倍以上に膨らみ、国の目論見は外れてしまいました。門前薬局は、顧客を開拓する必要がないだけでなく、一つの病院から出る処方箋を扱うので、品揃えも少なくて済み在庫のコントロールも容易です。一方、患者は、処方箋を受け取って病院を出て、薬を受け取らなければならず、何か問題があればもう一往復する必要もあり、気象条件や患者の身体能力によっては大きな負担になります。本来は、処方箋を持って自宅近くの薬局へ行けばよいのですが、多くの医療機関の処方に対応できる調剤薬局は滅多にありません。数倍の自己負担に見合うメリットがあるはずもなく、形式的な医薬分業のために患者の身体的・経済的負担が増加していると言えます。

 このような矛盾がようやく昨年の11月に行われた内閣官房行政改革推進本部の行政事業レビューでも取り上げられ、調剤報酬の見直しを求める意見が出されました。厚生労働省は平成28年の診療報酬改定で、「かかりつけ薬剤師指導料」を制定し、24時間対応や在宅対応を進めようとしています、これには調剤薬局の再編成が必要なため容易ではありません。

 門前薬局は独立性を保つために、医療機関とは建物が別であるだけでなく道路やフェンスで隔てられていることが必要でしたが、患者の利便性のためフェンスは不要と規制が緩和されました。すると今度は、医療機関の敷地内に門内薬局を誘致して賃貸料を取ろうとする動きが大病院を中心に出てきました。厚労省は医薬分業に反すると難色を示しています。

 このように行政と病院と薬剤チェーン店の思惑が絡み合って医療を混乱させているのが現状です。患者は医療機関からアクセスのよい門前薬局を選びます。県立新庄病院が数年後に新築移転するようですが、その玄関の位置によって周辺の土地の値段も変わるでしょう。でもそのときに門内薬局ができたらどうなるでしょう。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日第829号 平成30年1月15日(月) 掲載

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