新庄徳洲会病院

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掲載日付:2014.07.15

Vol.108 カメムシはなぜ臭い

 カメムシ研究の大家である藤崎憲治先生の話をラジオで聴く機会がありました。とても面白い内容だったので紹介します。

 カメムシといえば何といってもあの匂いです。いったい何のためにあのような臭気を放つのでしょう。私は、捕食者に匂い物質を放って相手が怯んだ隙に逃げるのではと思っていました。そのような働きもあるのですが、最も重要なのは情報の伝達です。捕食者が来た時に仲間に危険を知らせるのです。カメムシは群れていることが多く、危険が迫ると警報フェロモンを出して、ばらばらに逃げることで被害を最小限にするのです。

 危険が去った後には警報を解除して、再び群れを作るのですが、それにもフェロモンを使います。おもしろいことに、それが警報フェロモンと同じ物質なのです。同じ化学物質を用いて、どうして正反対の行動を取るかというと、濃度を変えるのです。警報には濃い濃度で、その解除には薄い濃度でという使い分けをするのです。2種類の化学物質を作るよりはるかに労力が少なく、理にかなった方法です。

 多くの昆虫にとって最大の敵はアリです。アリはカメムシを非常に嫌いますが、死後しばらくして匂いがしなくなったカメムシは、餌として巣に持ち帰ります。なぜアリがカメムシの匂いを嫌うかというと、アリの警報フェロモンの成分が、カメムシと同じだからです。最大の敵と同じフェロモンを使うことで、身を守っているのです。

 日本人との付き合いも古く、ほおずきという植物がありますが、「ホウ」はカメムシで、ホウが好む植物だからほおずきと呼ぶようになったという説もあるようです。カメムシの匂いが好きな人はいないでしょうが、東南アジアでは芳香と感じる人がいるそうです。古代エジプトの時代から香辛料として用いられているコリアンダーは、カレーなどにも使われていますが、カメムシの匂いに似ているということから別名カメムシソウとも呼ばれています。

 昔に比べてカメムシは増えています。1970年以降の減反政策によって放棄された田んぼにイネ科の雑草が増え、これを寄主植物とするカメムシが増加しました。また、等級の高いコメを作ることを目指すようになったために、カメムシによる斑点米の混入を極端に少なくするために、農薬もたくさん使用されました。同じことが果樹にも当てはまります。スギやヒノキなどにつくカメムシは、果樹の大敵ですが、戦後の大規模な植林とその後の放置により増えています。カメムシは匂いだけでなく、農業への害が大きいので嫌われていますが、実は政治が産んだ害虫という見方もできるのです。

院長 笹壁弘嗣
新庄朝日 第745号 平成26年7月15日(火) 掲載

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