新庄徳洲会病院

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掲載日付:2005.07.15

Vol.06 超音波検査の歴史

 超音波検査は"エコー"と呼がれることが多いのですが、"エコー"とは"反響・こだま"であり、山に登って「ヤッホー」と叫ぶと、しばらくして「ヤッホー」と返ってくるのも"エコー"です。「ヤッホー」は音波のエコーであり、医療の現場で心臓やお腹の検査に用いられているのは超音波のエコーです。

 そもそも超音波とは、周波数(1秒間に何回の振動があるかの単位)が2万ヘルツ(1秒間に2万回の振動)以上の音波をさし、ヒトの耳では聞き取れません。コウモリは盲目であるにもかかわらず、洞窟の中で自由に飛び回り、なおかつ虫も捕まえてしまうのは、超音波を発してその跳ね返りを察知しているからです。その他イルカやイヌやネコをはじめゴキブリも超音波を利用しているそうです。

 ヒトが超音波を作り出せるようになったのは、1880年のことで、宝石の表面に小さな埃が付着することをきっかけにして、水晶に圧力をかけると電気が生じる圧電効果が発見されてからです。そして、ヒトの生活に応用されるのは、1912年に起こった豪華客船タイタニック号の沈没事故がきっかけです。船から海中の氷山の位置を調べる方法として、水の中で減衰しにくい超音波が跳ね返ってくるまでの時間を測定し、1914年には3km先の氷山を見つけられるようになります。その年に始まった第一次世界大戦では、潜水艦の位置を知る目的にも利用されます。このときに作られたものが、現在の医療用超音波発生装置の基礎になります。

 医療の分野に超音波が登場するのは1950年代で、超音波の組織破壊作用を生かして、末期癌の痛みやパーキンソン病に対して脳の一部を破壊する試みがなされます。また、現代でも行われている超音波による理学療法もこの頃から始まります。診断の分野でも、この頃から胆石や乳腺腫瘍に応用され始めますが、何といっても画期的だったのは、2次元的な断層像が描けるようになったことです。1951年に米国のコロラド大学で、水の中でヒトのお腹や首の断面を見ることに成功します。

 1954年には"ソノスコープ"と呼ばれる診断装置が作られ、雑誌「ライフ」にも写真入りで紹介されますが、水をはった風呂桶の中にヒトが入っており、現代の感覚ではかなり滑稽です。1957年にはバームクーヘンを半分に切った形の水槽に水をはり、"穴"の部分にヒトが入る"パンスキャナー"と呼ばれるものが開発されます。 これにより水の中にヒトが入る必要はなくなりますが、検査の間はじっと動かない姿勢を維持しなければならず、心臓のような動く臓器にも対応できません。リアルタイムに画像を見ることができるのは1966年になってからで、その後は飛躍的に進歩し、画像も鮮明になり、今では往診に持ち運べるくらいコンパクトになっています。

院長 笹壁弘嗣
新庄朝日 掲載

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