Vol.311-2 新入職員へ-2
④二元論の危険性
受験勉強は効率よく正しい答えを出すことが全てですが、我々が応対する問題は、答えが1つではない、あるいはそもそも答えが無いことも珍しくありません。いたずらに答えを求めるのではなく、何が問題であるかを考えることを大事にしてください。目の前にある未知なものを、すぐに正誤や好悪などの2つに分類することをせずに、判断を保留する選択肢を残してください。その問題を心に留めていると、その後に自分が成長すると、わからなかったことが急にわかる瞬間に巡り会えることがあります。成長とはちょっとしたきっかけで突然に起こるものです。考え方や行動が自分とは異なる他者に敬意と好奇心を持って接することができればよいですね。
⑤自立した大人とは
10年くらい前だと思いますが、ある本の中に「ワンピース」というアニメの主人公であるルフィーの台詞-俺は剣術を使えねェ、航海術も持ってねェし、料理も作れねェし、ウソもつけねェ。俺は助けてもらわねェと、生きていけねェ自信がある-が紹介されていたことを驚愕しました。「ワンピース」は映画の予告編を観たくらいで、漫画もアニメも知りませんでした。このような台詞は決して私の若い頃に漫画やアニメでは見られませんでした。主人公が自分の弱さや欠点を自覚し、その上でことを成し遂げようという物語が、子供向けに造られていることを知り、日本のアニメは世界を牽引しているのも当然かという気になったことを覚えています。
経済的・精神的・社会的に自立した人を大人と呼ぶと教えられましたが、本当でしょうか。自分が不完全なことを知ることが自立の必要条件です。そんな不完全な自分が、患者やその家族からすがられることを自覚してください。そんな重圧には耐えられないでしょう。だからこそチームプレーが必要なのです。困ったときやどうしていいかわからないときには声を上げてください、助けを求めてください。患者は弱者ですが、弱者が正しいとは限りません。医療従事者に対するハラスメントは軽視できないレベルになっています。そんな時も、一人で立ち向かう必要はないのです。
医療界では医者が一番偉いと思われていますが、私の経験では医者が一番なのは我儘なことです。それは医者が個人プレーがかなりできるからだと思います。チーム医療の妨げになるのが医者であるのは多くの医療人が気づいているはずです。医者は単に一番責任が重いというだけで、給料が高いのは責任が重いからです。職業に貴賤はありませんが、人間には貴賤があります。
⑥非凡なる凡人を目指して
私は、まだ平凡なる凡人ですが、非凡なる凡人を目指して生きてきました。非凡なる凡人とは、周りから必要とされる人です。特別な才能もない普通の人間がそうなるためには、良い習慣を身に付け、昨日の自分に勝つ努力を続けることです。昨日の自分に勝つために、自分よりも優れた先輩や同僚は当面の目標になります。そして一所懸命に励んでも、大きく負け越している自分を許してよいのです。私は3年間の大学受験で、9連敗の後にやっと1勝して医者になることができました。その後も、実感としては1勝3敗6分くらいの毎日です。嬉しいことや楽しいことよりも、辛いことや苦しいことのほうが多いかもしれませんが、とりあえず3年位は、頑張りすぎずへこたれないで働いてみませんか。ダメダメな私を院長として20年以上受け入れてくれて、少しずつ成長させてくれている病院なのですから、可能だと思います。偉そうなことを言っている私も、まだまだ発展途上というか年齢からは衰退途上の人間です。