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トップページ > 院長のコラム > Vol.25

Vol.25 最終回 老化は悪くない  

新庄徳洲会病院   院長 笹壁弘嗣(ささかべひろし)
 「若いってすばらしい」とか「若い頃はよかった」など、「若い」は肯定的に捉えられることが多い反面、「年はとりたくないものだ」とか「いい年をして」など、「老いる」は否定的に捉えられることが多いようです。しかし、長い経験を積んでいるという意味や物事をよく知っているという意味から、「老練」や「長老」という肯定的な表現もあります。若いからこそできることがあるのと同様に、年老いたからこそできることもあるのです。年をとり、失われたものを嘆くのではなく、得られるものを喜んではどうでしょう。

 昨今の異常な少年犯罪を見るにつけ、変な若者が増えているのは確かなようですが、おかしくなっているのは若者だけでなく、中年も高齢者も同じではないでしょうか。ダメな若者、ダメな中年、そしてダメな年寄りがあふれているのが現在の日本というのは言い過ぎでしょうか。かつて高齢者が少なかった時代は、まわりから「長老」と尊敬されるには人格面ですぐれていることが必要でした。今では、高齢者は希少価値もなくなり、予想外に長生きしてどうしていいかわからず、漫然と生きているというのが多数ではないでしょうか。年齢の如何に関わらず、現代の日本人には「覚悟」が欠けていると私は思います。「生きる覚悟」「老いる覚悟」「病になる覚悟」「死ぬ覚悟」「嫌われても子供をしつける人生の先輩としての覚悟」などなどです。

 スポーツ選手も年をとれば引退するように、身体能力はかなり早い時期から衰えます。また、身体能力ほどではないにしろ、記憶力も同様です。私も例外でなく、視力の衰えは明らかで、外科医として手術ができるのもそう長くはないでしょう。では、20年前の私と、10年前の私と、今の私ではどれが一番まともかというと、断然今の私だと思います。確かに肉体は衰えてきていますが、いろいろな経験をし、外科医としても人間としても少しは向上したと思えるからです。そして、まだ生きていられるなら、10年後にはもう少し賢くなるような気がします。肉体の衰えを補って余りある精神の向上が期待できるから、若さへのあこがれなどなく、年をとる恐怖もなくむしろ楽しみでさえあります。

 先頃亡くなられた哲学者の池田晶子さんは、若者を教え導くことができるのは、より賢い人間になろうと考え生きてきた賢い年寄りだけであり、そういう年寄りになりたいとおっしゃっていました。同感です。老化は恥じることもないし悪いことではありません。ただ、よりよく年老いたいものです。 極限の身体能力を競う 精神の高まり 若者もダメだが、年寄りもダメ 「若」という字は、しなやかな髪の毛をとく、身体の軟らかい女性の姿を描いたものであり、 「老」という字は、年寄りが腰を曲げて杖をついた姿を示していますが、皆さんは「老」をどのように捉えていますか。 だから、もし神様が若返らせてやると言ってもお断りします。